内容説明
「英雄勲章」が唯一の宝物のアル中の父。経済繁栄に憧れ、西側経済人に次々と身を委ねる娘。絶対に理解しあうことのできぬまま、それでもお互いの人生を想いあう父と娘…。平凡な父と娘の人生を通して、ソヴィエト社会を生きざるを得なかったロシア人の、けっして語られることなく記憶の中だけにしまい込まれてきた幾万のエピソードや想いが凝縮される…。
著者等紹介
マキーヌ,アンドレイ[マキーヌ,アンドレイ][Makine,Andre¨i]
現代フランスのロシア系作家。1957年、シベリア生まれ。悲惨な人生を送らざるを得なかった両親をもち、収容所の影に脅えながら育つ。モスクワ大学で文学博士号を取得し、大学で文献学を講じていたが、1987年、すべてを捨ててフランスへ渡る。当初は、パリの墓地で雨露をしのぐ生活もしながら、処女作である『たった一つの父の宝物―あるロシア父娘の物語』を執筆しフランス文壇デビュー。20世紀の悲劇を生きざるを得なかった数千万のロシア人の人生の哀しみを、初めて描ききった作家として絶賛されている。1995年「ゴンクール賞」受賞。現在、作品は世界30ヶ国で翻訳出版されている
白井成雄[シライシゲオ]
1933年、ソウル生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院で20世紀仏文学・思想を専攻。名古屋大学教授を経て、現在、同大学名誉教授
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
21
タイトルは娘のこととも読めるし父が最後まで大切にしていたソ連邦金の星勲章のこととも読める。イヴァンは戦場での悲惨な体験と上辺の賞賛とのギャップや、戦争体験を忘れてゆく人々との乖離に苦しむ。高給取りで海外勤務の恋人もいるオーリャもまた「こんな事をしていいのか」と時折浮かぶ良心と生きていかなければならない現実との狭間で悩む。離れて暮らしている二人は、お互いが幸せであるだろうと思っていたが、ある時イヴァンが娘の職業を知る。娘の相手が自分の家族を殺したドイツ人だった事を知ったイヴァンは事件を起こしてしまう。2015/09/24
のせなーだ
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★★★★2012/11/23