出版社内容情報
捜査側は、取調べの可視化(録画・録音)は、被疑者と捜査官の信頼関係を崩すとして反対するが、密室の取調べは冤罪の温床である。本書は、取調べの可視化の実現を訴える。
はじめに……田中敏夫 日本弁護士連合会取調べの可視化実現委員会 2
第1部 取調べの可視化の現状
現実的な立法課題となった「取調べの可視化」……小坂井久(弁護士) 4
捜査官と被疑者との「信頼関係」から生まれるえん罪……浜田寿美男(奈良女子大学教授) 8
弁護士が見た韓国における捜査の可視化――最近の状況と議論の内容……朴燦運(大韓民国弁護士)16
台湾における取調べ可視化の現状……陳運財(台湾・東海大学法律系教授) 34
第2部 パネルディスカション
取調べの可視化は世界の潮流だ――アジアで取調べの可視化を実現しよう! 40
江川招子(ジャーナリスト)・朴燦運(大韓民国弁護士)・浜田寿美男(奈良女子大学教授)・小坂井久(弁護士)・小野正典(弁護士)
はじめに
2004年の通常国会において、裁判員制度導入のための「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」と、刑事裁判の充実・迅速化のための「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」がそれぞれ可決成立しました。
その結果、市民が参加して刑事裁判を行う裁判員制度が2009年までには開始されることが正式に決まりました。
裁判員制度の下において、市民である裁判員にとって分かりやすい裁判を実現するためには、被疑者の取調べの全過程を録画・録音(可視化)することが何よりも不可欠であり、裁判員制度が開始されるまでには、是非ともそれを実現しなければなりません。
取調べの可視化はもはや世界的潮流となっており、わが国においても、この機会を逸することはできないと考えております。
日本弁護士連合会は、2003年8月に、「取調べの可視化実現ワーキンググループ」を設置して取調べの可視化の実現に向けた活動を進めて参りましたが、2004年6月、「取調べの可視化実現委員会」を発足させて、本格的な活動を開始しております。
本ブックレットは、2004年3月に発刊した「取調べの可視化(録画・録音)で変えよう、刑事司法!」(GENJINブックレット42)のパ発言内容を採録させていただいた方々には改めて御礼申し上げる次第です。
パート1と併せて、本ブックレットを広く活用していただき、市民の皆様が、取調べ可視化の重要性とその必要性について理解を深めることに役立てていただければ何よりも幸いです。
2004年10月
日本弁護士連合会取調べの可視化実現委員会
委員長 田中 敏夫