内容説明
フランス・ニース在住の俳人が綴る、本との交際秘録。
目次
読書というもの
それは音楽から始まった
握りしめたてのひらには
あなたまかせ選書術
風が吹けば、ひとたまりもない
ラプソディ・イン・ユメハカレノヲ
速読の風景
図書館を始める
毒キノコをめぐる研究
事典の歩き方
『智恵子抄』の影と光
奇人たちの解放区
音響計測者の午後
再読主義そして遅読派
名文暮らし
接続詞の効用
恋とつるばら
戦争と平和がもたらすもの
全集についてわたしが語れる二、三の事柄
アスタルテ書房の本棚〔ほか〕
著者等紹介
小津夜景[オズヤケイ]
1973(昭和48)年、北海道生まれ。2000(平成12)年よりフランス在住。’13年「出アバラヤ記」で攝津幸彦記念賞準賞、’17年句集『フラワーズ・カンフー』で田中裕明賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
34
小津さんのエッセイは、読み進めるうちに自分と対話していく不思議な感覚に陥ります。読みやすいようでちょっと引っかかる、けれどそれがいい意味で自分の思考を引っ張りだし、時間をかけてじっくり読む醍醐味があります。「いつかたこぶねになる日」より、彼女の生き様や内面が分かり、さらに深みも感じました。正直ピンとこない話もあるけど、これに出合えるだけでよかったと思える、ぐっと深く落ちていく箇所もあり、読み応えある一冊でした。フランスでの生活や感じたことがベースなのも他にない面白さです。2024/03/11
コンチャン
23
著者の博識ぶりがいかんなく発揮されたエッセイだと思います。笑わせてくれるような面白い作品ではないかもしれないけど、静かに丁寧に言葉と向き合い日々が綴られているような感じで読みました。2024/08/16
nami
20
本が読みたくなる本。私自身は読解力にも理解力にも乏しいので、気になっていた本をようやく手に入れても、頭に入って来なかったり別の思考に邪魔されたりと、ままならない読書時間が多い。その度に自分の頭の不出来に落ち込んでいたが、理解することだけが読書ではないのだと、この本を読んで改めて気付いた。そしてそういった気付きや、自分とその本の間でしか交わされないやり取りにこそ意味があるのだと感じた。この本で紹介されている本や詩がどれも美しく、一部分だけでも心が震わされる。また、家の本棚にある本を再読したい衝動に駆られた。2024/12/12
きゅー
12
小津夜景を知ったのは、今年一番の収穫だと思っている。知性と感性の高さに惚れ惚れとしてしまう。「面白い本に楽しませてもらっているうちはまだ甘い。読書の醍醐味は、自力で面白がる方法を極めるところにある」という言葉が耳に痛い。ややもすると読書が創造的な営みであることを忘れ、今日中にここまで読んでおきたいなどど不遜なことを思う私には日頃の怠慢を反省するよい機会であった。が、そんな些少なことはおいておいて、本書が「面白い本に楽しませてもらう」体験そのものというのも奇妙なことだ。2024/05/24
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
10
▼著者はフランス在住の俳人。読書を主なテーマとしたエッセイ集。40篇で構成されている。▼日常生活の中で感じたことと、自ら読んだ本の一節とを絡めながら文を綴っている。 ▼「事典は雑誌の一種」「同じ本を何度も読む…二十回、三十回と」「わたしは耳栓をして読む」「近所を歩きながら、読み終わった本を思い返していることがよくあって」…著者独特の本との接し方を、味わってほしい。▼語彙が豊かで、表現が柔らかい。そして詩を読むように読み進めることが出来た。2024/04/24