出版社内容情報
《他者》《共同体》《倫理》といった主題系と深く切り結ぶ中上健次の小説を系譜的に読み解く
第一章《被傷者》の苛立ち「補陀落」、『岬」/第二章 誤読の効能『枯木灘』/第三章《交感》の実践を/として書くこと 『紀州 木の国・根の国物語』/第四章《解放》の論理に根ざす文化の構想『千年の愉楽』/第五章 危機に立つ《小説家》『熊野集』/第六章 死者と共同体 『地の果て 至上の時』/第七章「路地」なき後のアイデンティティ『日輪の翼』/第八章 妄想の反復・亡霊の期待『野生の火炎樹』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiratax
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中上の初期青春小説あたりを題材に修士論文くらいまでを書く学生はちらほらいそうだが、一連のサーガで博士論文まで仕上げた濃厚な論文。現実の部落運動史とリンクさせてゆく丁寧な作業。雑駁な中上伝説・神話を解きほぐし現実に着地させる。秋幸三部作に引っ張られず「野生の火炎樹」までを射程に入れている丁寧な仕事。「熊野集」の読み解きも見事。著者は女性のよう。中上はマッチョなイメージと裏腹に、海外では女性の研究者が多いという話も聞いた。さらにもっとも評価されている作品は「讃歌」だとも。2014/09/10