内容説明
三十七歳の私は、二度目の妻とその連れ子の二人の娘とありふれた家庭を築く努力をしていた。しかし、妻の妊娠を契機に長女は露悪的な態度をとるようになり、『ほんとうのパパ』に会いたいと言う。私も、長女を前妻との娘と比べてしまい、今の家族に息苦しさを覚え、妻に子供を堕ろせと言ってしまう―。「家族」とは何かを問う感動の長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
522
複合家族文学とでも呼べばいいのか。お互い連れ子を持ち再婚した男目線による「新しい形の家族の物語」。盛り上げ方もラストに至るまでも、ストーリーテラーである重松さんの本領発揮、というところ。しかしながら自分は都合よく棚の上に乗っかり、再婚相手をダメダメ設定、切れ者の前妻に手を上げるシーンに至ってはウンザリした。初期作品のトンガリとはいえ、もう読まない。2024/07/09
yoshida
129
お互いに再婚。それぞれに子供がいて、夫婦は新たな子供を授かる。妻の連れ子との難しい関係。仕事の悩み。家庭の悩み。夫は妻に言ってはいけない言葉を発してしまう。なかなかの鬱展開で閉塞感が漂う。雷雨の日に家族の関係は動き出す。家族に、母親に、父親になる。お互いに価値観や考え方がある。軋轢は生まれるし、衝突もする。どの家庭にもあるだろう。向き合う、時間を置く。どの行動が正解かは分からない。ただ、逃げずにいることが大切なのではなかろうか。個人的には、こんな修羅場を経て家庭を保てるか。家庭を持つ人で見方も変わるかな。2021/02/23
とん大西
123
再婚した妻の幼い娘たち、先妻との娘、そしてもうすぐ産声をあげるであろう妻と私の子。父でいよう、父であらねばならない。心の距離は近いのか遠いのか。上手に生きようとしてもままならないその悲哀。置かれた状況は違ってても、彼の葛藤は私たちと地続きだ。とりわけて幸福な境涯でも悲嘆するほど不幸でもないありふれた家族の日常。でも、そこにささやかな幸せがある。一片の光りが長い人生を歩む緣となることもある。苦みを隠さない読み味。でも、時折どうにも涙目になってしまうのです。子どもたちと向き合う光景、その心象風景に。2023/01/03
ともくん
66
ツギハギだらけの家族。 家族を演じているだけなのか。 途中からダメになったんじゃない。 初めからダメだったのだ。 スタートすらしていなかった。 それでも、ツギハギだらけでも嘘でも嫌いでも家族になれる。 途中でダメになったら、そこからまた、スタートすればいい。 それぞれが違う方向に向かうスタートでもいい。 一歩でも踏み出せれば。2018/10/13
Tsuyoshi
66
妻や娘と別れ、子連れの女性とで再婚した男性が主人公。同じ状況であれば誰もが陥るであろう苦悩や葛藤においてひとつひとつ丁寧に掘り下げて描かれてあった。特に風俗嬢アンジーの「隣の人を常に好きになる」ポリシーと前向きで優しい言葉の数々が印象的。2017/12/03