感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とうゆ
8
○ゴールデンカムイの愛すべきトリックスター、脱獄王白石のモデルになった人物の伝記。厳重な警戒下での脱獄4回、脱獄後の山中逃亡生活計960日。それを可能にしたのは正に漫画並みの超人的な身体能力と精神力。 「人間が作ったもんは必ず壊せる」 その説得力よ。かっこいいぜ。2023/03/15
いっち〜
5
前々から興味があった日本の脱獄王についての本。今やネット等で数多くの情報が出回っている白鳥由栄だけど、この本は「脱獄王」としてだけではなく「一人の人間」としての白鳥由栄を丁寧に掘り下げているところに大きな価値があると思う。白鳥由栄の不器用ながらも真っ直ぐで筋を通す性格や、彼を見守った人たちの気持ちが良く伝わってくる。特に彼の死後に遺骨を引き取った女性の話は本当に心を打たれた。反面、彼の脱獄や山中での年単位の逃亡生活等、「生きるためならここまでやれる」という人間の可能性の大きさも見せられて別の意味で感心した2017/01/31
蛸
5
「脱獄」という行為には(刑務所が国家権力の施設であるが故に)自ずと反権威的なイメージが伴う。白鳥由栄もそのようなイメージに違わない人間だ。4度の脱獄は全て、刑務所の不遇な扱いに対する抗議として行われたものでありその執念を支えたのは「人間の作ったものは必ず壊すことができる」という信念である。強靭な肉体を持ち、手足の関節を自在に外すことができる特異体質の白鳥はほとんど山田風太郎の小説に出てくるような存在だ。この本には白鳥由栄の人間性に迫る側面もあるが個人的にはやはり彼の行った脱獄の具体的な手順が興味深かった。2016/11/29
まめお~
4
吉村昭氏の「破獄」を読了し、そのモデル・白鳥由栄氏や関係者への取材がベースのこの本も読んでみた。「破獄」に登場したエピソードは大体出てきたが、初めて知ることも多かった。「破獄」は【小説】なので吉村氏が語る「史実は曲げず」アレンジされているところが(当然に)ある・・ということが、こちらを読んでよくわかった。吉村氏が「破獄」を執筆した時の裏話が知りたい。出版時期も近いし、吉村氏、斎藤氏がお互いを意識することはなかったのだろうか。特に白鳥氏死後の感動的なエピソードを「破獄」では描いていないのが気になる・・2014/09/15
ゆるるん
4
脱獄の描写はハラハラさせられるものだった。しかし、この本の読みどころはそこではない。白鳥由栄自身の人格にあると思う。極悪人なのかと思いきやそんなことはなく、義理や人情に厚くとても好感のもてる方だった。とにかく全ての人に読んでほしい。人生の一冊。2013/04/07