内容説明
春の雨が、満開の桜の花を散らして降る夜、白髪のバーテンダーは一組のカップルを待ちつづけた。結婚記念日の夜に、毎年決まってやって来る彼らのために、思い出のカクテルを作ろうとして…。移りゆく季節と一緒に、何故か変わってしまう人間の気持ち。不器用で優しい男と女たちのドラマを描く十二編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
greenish 🌿
40
(再読)移りゆく季節とともに変化する男と女のドラマ12編 ---蔵書整理して見つけた15年程前に読んだ本。懐かしい香りがしました。 スマートに酒を嗜む男が、飲みかけビールにドボンとバーボンロックを傾ける。屈託を抱えた胸の奥に、ボイラーのように熱い火が・・・《ボイラーメーカー》。春の雨が桜の花を散らして降る夜、想い出のカクテルを作ろうと白髪のバーテンダーは一組のカップルを待ち続ける。果たして桜色の酒は儚く過去へと変わり・・・《チェリーブロッサム》。 雨の日に、オキさんの美しく切ない物語が沁み入ります。2014/06/26
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
40
今夜もどこかのバーで女と男のドラマの幕があがる。カウンター越しに見届けるバーテンダー。いつか満開の桜の夜に飲んだチェリーブロッサム。今夜は別の相手と別の酒を飲む。いつもの酒場に集う仲間が飲むハーフ&ハーフ。今夜はビールが泣いている。ステーションホテルのバーの宿り木には旅立ちを待つ男たちが留まっている。行き先を知っているのは自分だけ。束の間の邂逅に相手の人生が透けて見える。バーとカクテルを小道具に使った切ないショートストーリー12篇。雨の日にふと読んでみたくなるきれいな本です。2014/06/28
greenish 🌿
29
(再々読)移りゆく季節とともに何故か変化する人の気持ち…。バーを舞台に展開する男と女の12の物語 ---バーの止まり木に腰を落とすと、人はスイッチが切り替わるのではないだろうか。張りつめた感情が緩んだり、背筋を伸ばして鼓舞したり。ましてや日本のバーなれば、春の華やぎ、夏の煌めき、秋の憂い、冬の孤独…四季の移ろいのように心模様も変わるもの。そんな時分に出逢った男女の先行きなど、だれが確約できようか。オキさんの粋なストーリータイトルと前のめりにさせるキメの一文に触発されて、今宵はどんな気分になるだろう…。 ⇒2017/06/23
tsunemi
16
オキシローのカクテルシリーズ4作目。今作は各編ごとに設定河岸とも変えていろんなbarを楽しめる。謎を残したまま終える作品が多いがそれがまたbarの神秘さを高める効果に。挿し絵がまたいいんですよね。バンピラなるカクテルが出てきましたが一般的なバンパイアとはレシピが異なるようでオキさんどこで見つけてきたのかな。流石に仕事したいなぁ。2020/05/15
再び読書
13
いつも酒場にはドラマがある。しかし、しがないサラリーマンには少し敷居が高い。気取らずに洒落た雰囲気を出せる大人になりたいと思うが、50を迎えて出来ていないので多分無理だろう。命の水である酒を楽しんでいける健康さを継続して生きたい。「電話がチリっと身をよじった」という表現は少し心に残った。また「ウォツカの分水嶺」という言葉もなかなか気にいりました。なぜズブロッカに触れないかは読み解くことが出来ませんでした。まあ、気楽に酒の本は読みたいのでよしとします。2014/05/23