内容説明
マリアは死にたいと思った。日本に着いたその日から売春を強要されて身も心も引き裂かれんばかりであった。こんなことがいつまで続くのか。もはや覚醒剤を打ち、性の快楽に溺れるしか絶望から逃れる術はないのか?ダンサーを夢みたフィリピーナの苛酷な現実と在日韓国人家族の悲劇。国境を超えた人間存在の闇を問う山本周五郎賞作家の初期傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
22
20年以上前の作品で時代を感じるが、当時の時事問題を孕み複層的で面白い。不法滞在で強制的に売春させられるフィリピン人。裏のある不動産業と政治家。親の国籍が子供の結婚について回る日本の不可思議なシステムの描写なども描かれているが、これにかなり強烈な性描写を絡めエキサイティングな内容。初期作品という事もあり、てんこ盛りすぎる気がしないでもないがイッキ読み。最後にマリアの結末が気になった。 2015/12/27
ケイコ
6
根深い人種差別。貴子の潔さで少し救われた。面白く読めたが、SEXシーンはこんなに必要ない気が・・・2014/08/13
みず
3
日本での明るい未来を夢見ていたフィリピン人のマリア。結婚するために日本人への帰化を条件とされた木村。この本を読むと日本とは何と住みにくく、そして閉鎖的な民族なのかと感じる。時代設定がひと昔前だが、今の日本にも同じような苦しみを抱える人達がきっといる。人口が減少し、廃れていくであろう日本の未来。心を入れ替えないとこの国の未来は危うい。2022/01/03
つけ麺部長
3
フィリピン人と在日韓国人の話。梁先生の私小説ではありませんが、自己のアイデンティティや外国人差別をテーマにした作品なので、梁先生が今まで取り上げてきた問題と関連しています。描写は凄絶ですが、バブル前の日本ならあり得たのかなと思いながら読みました。2017/10/01
aj
2
フィリピン人の娼婦と在日朝鮮人のアイデンティティを描いた作品。引き込まれた。2008/07/10
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- 和書
- 山狩 光文社文庫