内容説明
恋をするなというほうがむつかしい。それは、熱狂と官能の街ブエノスアイレスから始まった。7人の狂おしい恋と、胸をうつ家族の絆を描く最新小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
94
美しく儚い想いに満たされた短編集でした。とはいえ、いい恋愛のようであっても不倫の恋。だから精一杯好きになっても幸せになれない空気が流れているのが切なかったです。静かで優しいけれど叶わぬ恋という悲しみが感じられる1冊です。2017/05/14
ケロコ
49
タイトルに不倫とあったから身構えて読んだけど、どれも美しくて儚い想いが詰まっている悲哀に満ちたお話。大人の私にはなかなか心地良かった。情景も相まって優雅な雰囲気が終始立ち込めている感覚。生きていると色んな感情に葛藤していくけど、いちいち向き合ってるとヘトヘトになって疲弊していく。ユルユルと軸を持って生きることが必要と感じた。うーちゃんに、感謝。2016/05/05
まひと
31
ばななさんの文章と、原マスミさんのイラスト、山口昌弘さんの写真が合わさりとても素敵な一冊でした。"不倫"という負のイメージはどちらかというと控えめで、仕事も恋も何もかも含めてこの主人公たちは生きているんだなぁという印象。南米、すごく行ってみたくなりました。サブマリーノ飲みたい!でも、写真やイラストのおかげでちょっとだけ行った気分になれたかなぁ(笑)「運命はどうしても彼女が愛する男と彼女を一緒にい続けさせたくないのかな、と思った。あるいはなにが起こってもいさせたいのか。解釈は本人の仕事だ。」2015/06/21
MINA
25
挿絵でも何度となく繰り返される表紙絵のタッチがクセになってきた。一篇終わるごとに数枚挟まるアルゼンチンの景色がすごく素敵。<電話>で奥さんから「今朝、宮本が、交通事故で亡くなりました。大変お世話になりました。」と不倫相手の死を旅行先で告げられるのはなかなかの衝撃だった。他は不倫というテーマを絡めてはいても、息苦しさは感じなかった。著者ならではの、自由でまるでどこまでもいけそうに思えてしまう開放的で自由な文体ともいえる書き方がすごく好き。<小さな闇>で祖母の為に2週間段ボール箱で暮らした母親の話が印象的。2015/10/28
うーちゃん
24
著者が実際に取材旅行に行っているので(そして才能が確かなので)、ブエノスアイレスやブラジルの激しさや鮮やかさ、静けさや優しさが、臨場感たっぷりに伝わってくる。写真もあるので、ちょっとした紀行文のようでもある。不倫は物語のテーマというよりは、背景のようなものだと思った。テーマはむしろ、みちならぬ恋や人の死や、家族の中の大小ある軋轢を、抱えたまま生きるか、乗り越えてゆくのか、という女性たちの悲喜にあるのかな。南米で別れる別れないの愛憎劇を繰り広げる話なら、たぶん読まなかった。お気に入りの一冊となりました。2016/05/03