内容説明
人里はなれた山村で、年老いた父親の看病をしながら暮らすひとりの男。ある日、女性が訪れて自分の叔父が殺されたことを告げる。探偵をしていた頃の同僚だった。あいつなら野垂れ死にして当然なのだが…。数日後、男は複雑な気持ちを抱えながら、山を降り東京へ向かう。油で海がひかる京浜工業地帯。町工場と歓楽街が近接し、かつては映画の都だった大田区蒲田。灰色にかすむ空の下、男は友が残した痕跡を必死に追った。そして浮かび上がる、いくつかの不可解な事実。倒産直前の印刷会社の乗っ取りと、それにからむ血染めの応酬。忽然と消えた9億円の土地証書の行方と、その裏にある優しい愛をめぐる悲劇。すべての真相を知った男は、この馬鹿げた事件の幕を、自分のやり方で降ろそうと決意する―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
141
『時には懺悔を』の見事なハードボイルドな世界観にすっかり魅了されてしまった打海さん作品です。今作も期待どおりの作風で、相変わらず読み進めていくうちにミステリーの展開などどうでもよくなってしまうのが不思議です。それだけとにかく登場人物が魅力的で、主人公はタフでありながら、どこかに優しさをのぞかせる感じが絶妙です。余計な描写や無駄な会話はいっさい存在しないゴリゴリのハードボイルド作品ですが、やっぱり読み終えると不思議な達成感があります。20年も前に書かれた作品ですが、やっぱり名作はいつの時代も素敵ですね。2016/12/11
GaGa
24
装丁につられて手にしてみたが…う~ん、なんとも中途半端でご都合主義的展開。ハメット、チャンドラー、マクドナルド、西村寿行、大藪春彦などを愛読されている方には向かない作品です。2011/05/14
一笑
2
中年の主人公真船と、19歳のちょっと変わった女の子万里子。悪の親玉錦織とその娘ひかる、萩本、仁子、路子、直子、登場してくる人物一人一人の個性というか人生がものすごい。中国系マフィアやら朝鮮系マフィア、暴力団、拳銃、爆薬、「これがハードボイルドだ!」という作品。いまいち内容が乏しいようにも思えるが、よくもまあ、これだけのストーリーを考えたなと思う。先を先を急ぎ、あっという間に読み終えてしまった。「新宿の飲み屋街は、その多くが中国系資本だ」なんて聞いているだけに、書いてあることが本当に様にも思えてきた。2020/08/15
Kamabonz
1
主人公がおじさんであるなら、これはハードボイルド小説。19才の女の子なら、チョイノワール青春小説ですね。敵役のあけすけでサイコな感じが、時代を感じさせます。難しさがないストーリーで、ま、たまには良いと思います。疲れないし。2014/12/18
ゆう
1
こういう小説のことを巷ではハードボイルドと呼ぶはずだ。探偵、拳銃、狂気に暴力、それから娼婦とマフィア。いかす。2011/03/01