出版社内容情報
ヘイトスピーチ被害に対して現行法はどこまで対処できるのか。歴史家・憲法学者・弁護士による熱く精緻な議論。シンポジウムの記録。「良い韓国人も悪い韓国人も殺せ」、「ゴキブリ朝鮮人は叩き出せ」――民族的少数者への差別・排除を扇動するヘイトスピーチ・デモが日本各地で頻発するなか、これを規制すべきとの声が高まったが、法律関係者の間では「表現の自由」を理由に法規制に慎重な声が根強く、議論は停滞し、マイノリティの被害を過小評価する結果となっていた。
被害当事者でもあり法律家でもある在日コリアン弁護士協会のメンバーらは、この状況を懸念し、2015年12月5日にシンポジウムを開催した。
ヘイトスピーチは長年にわたり日本国内で醸成されてきたレイシズム(人種差別)の結果であることを、近代社会歴史学の板垣竜太氏が基調報告、またパネルディスカッションでは、憲法学の木村草太氏を迎え、被害の実態をもとに、現行法ではどこまでどういった規制が可能か、どこから新法が必要となるのか、そもそも日本国憲法上ヘイトスピーチへの規制は許されるのか、何を「法益」とすべきか、といった具体的な法的議論が交わされた。
本書はその記録に、京都朝鮮学校襲撃事件の判決分析や、アメリカのヘイトクライム規制に関する報告、「ヘイトスピーチ解消法」の成立を受けての在日コリアン弁護士協会会員による座談会を収録した。
本書は、今後の具体的な法規制へ向けた議論の指針ともなりうるだろう。
1.基調報告:「日本のレイシズムとヘイトスピーチ」(板垣竜太)
2.報告1:「ヘイトスピーチとは――その被害と実態について」(金星姫)
3.報告2:「人種差別の違法性を認定――京都朝鮮学校襲撃事件判決」(具良?)
4.報告3:「アメリカにおけるヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制」(金昌浩)
5.パネルディスカッション:「ヘイトスピーチはどこまで規制できるか」(木村草太、板垣竜太、李春熙、金哲敏、金竜介)
6.座談会:「シンポジウムを終えて」(金哲敏、金星姫、金竜介、宋恵燕、韓雅之、李春熙)
木村草太[キムラソウタ]
1980年生まれ。首都大学東京法学系教授。憲法学。
著書:『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)
板垣竜太[イタガキリュウタ]
1972年生まれ。同志社大学社会学部教授。朝鮮近現代社会史・植民地主義研究。
著書:『朝鮮近代の歴史民族誌』(明石書店)、『Q&A朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任』(共編著、御茶の水書房)、『東アジアの記憶の場』(共編著、河出書房新社)、『日韓 新たな始まりのための20章』(共編著、岩波書店)
LAZAK(在日コリアン弁護士協会)[ラザック ザイニチコリアンベンゴシキョウカイ ]
2001年5月、東京にて在日コリアン法律家協会として設立。翌02年6月に在日コリアン弁護士協会へ組織改編。在日コリアンヘの差別撤廃、その権利擁護、民族性の回復(民族教育の保障等)及び政治的意思決定過程に参画する権利(参政権・公務就任権)の確保などを活動の目的としている。
刊行書籍:『裁判の中の在日コリアン 中高生の戦後史理解のために』(現代人文社)、『韓国憲法裁判所 社会を変えた違憲判決・憲法不合致判決 重要判例44』(日本加除出版)、『第2版 Q&A 新・韓国家族法』(日本加除出版)
内容説明
「表現の自由」を前に立ちすくむわけにはいかない!今そこにあるヘイトスピーチ被害に対して、現行法はどこまで対処できるのか?歴史家・憲法学者・弁護士たちの熱く精緻な議論のゆくえ。白熱のシンポジウムの記録。
目次
基調報告 日本のレイシズムとヘイトスピーチ(当事者意識のなさの歴史性;レイシズムと国家;「ヘイトスピーチ」の歴史性;法的規制について)
報告(ヘイトスピーチとは―その実態と被害について;人種差別の違法性を認定―京都朝鮮学校襲撃事件判決;アメリカにおけるヘイトクライム規制)
パネルディスカッション ヘイトスピーチはどこまで規制できるか(ヘイトスピーチによる被害とは?;京都朝鮮学校襲撃事件の判決にみる「人種差別」認定;人種差別撤廃条約成立までの歴史的背景;日本はすでに人種差別撤廃条約上の義務を負っている;警察が動かないという問題;マイノリティ集住地区で「朝鮮人大虐殺を起こしますよ」は、起訴可能か?;人種差別やヘイトスピーチに対する新たな立法は必要か;日本国憲法と刑事規制―何を保護法益とするか;わいせつ表現に対する規制は合憲とされているが…;被害を受けているマイノリティのためのしくみをどうつくるか;質疑応答)
LAZAKメンバーによる座談会 シンポジウムを終えて
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むっち