内容説明
過ぎ去らない記憶との邂逅。不本意な生を強いるのは何ものか―90年代の代表作13篇。
著者等紹介
目取真俊[メドルマシュン]
1960年、沖縄県今帰仁(なきじん)村生まれ。琉球大学法文学部卒。1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。86年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。97年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
79
1に比べればましになってるけど単行本収録済の作品が多いです(13篇中7篇)。この選集3冊は未収録だけで1冊にまとめればよかったのでは?2017/06/05
J D
69
読むのがしんどいけど、最終的には読んで良かったと思えるのが目取真俊さんの特徴!?かな??本選集には芥川賞受賞作「水滴」も収録されていてなかなか充実のラインナップ。読了後に背中がゾクッとする「盆帰り」私の大好きな宮本輝の短編「蝶」の雰囲気を持つ「ブラジルおじいの酒」等楽しめる作品が多い。もっと評価されても良いと思うんだけどな。「剥離」は世にも奇妙な物語の元ネタとして使えそう。因みに目取真作品で一番の推しは「眼の奥の森」です。2025/04/06
燃えつきた棒
32
※くれぐれもお食事の前にはお読みにならないで下さい。また、下ネタ厳禁の方もお読みにならないで下さい。引用文中にあからさまに性的な描写がいくつかみられますが、作者の芸術的意図を尊重するために、原文のまま引用させて頂いております。 「水滴」: 安部公房の短篇や島尾敏雄『夢の中での日常』を彷彿とさせる短篇だ。 決して独創性がないという意味ではなく、彼らの短篇と同じぐらいシュールで面白いという意味だ。/ ある日、徳正の右足が突然膨れ出して、冬瓜(すぶい)のようになってしまう。→2023/12/14
スターライト
5
沖縄出身の作家の作品だけあって、「本土」にはない米軍や沖縄戦、ハブなどの風土、民俗がそこかしこに陰に陽に現れている。方言も多用され、氏独特の世界を彩っている。内容としては日常の生活(学校での級友との関係、仕事と家庭生活など)に垣間見せる奇妙な出来事(冒頭の「沈む〈間〉」や「剥離」)もあるが、戦時中での体験が強烈にフラッシュバックする「水滴」の印象が強烈。「オミナワン・ブック・レビュー」は架空の書物の書評集だと思われるが、取り上げられる本がユタと皇太子の伴侶問題が多かったのは、読んでてしんどかった。 2024/06/28
novutama
5
著者が辺野古で拘束されたニュースが記憶に新しい。優れた小説家とは類い稀な想像力を持つ者であり、想像力とは声なき声を聞く力であろう。例えばそれはコトバを持たない死者の声だ。青い海と空、沖縄の美しい風景の影に、夥しい数の口をつぐんだ死者がいる。口をつぐむのは死者だけでない。生き残った人々は罪の意識からより一層固く口をつぐむ。語られないコトバ達を紡ぐために、幻想を強固なリアリズムにのせなければならない。著者のマジックリアリズムは決して方便などではない。圧倒的な読後感は安易な引用を許さない。2016/06/19