内容説明
せめぎあう記憶、ひびきあう言葉。米軍に占領された小さな島で事件は起こった。少年は独り復讐に立ち上がる―60年の時を超えて交錯する記憶の物語。連作小説。
著者等紹介
目取真俊[メドルマシュン]
1960年、沖縄県今帰仁(なきじん)村生まれ。琉球大学法文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ダイ@2019.11.2~一時休止
80
戦後の沖縄の話。重いわぁ。中盤にあった改行なしの約20ページがよみずらい・・・。2017/05/21
Willie the Wildcat
52
登場人物1人1人が背負った戦後。”後”?終わっていないよね。人の心は機械ではない。言動の豹変や自己保身も、意識/無意識の中で”戦後”の重石となるはず。小夜子と盛治の心の繋がりが、数少ない救い。哀しみがその絆を強くしたのは事実も、そんな哀しみが生まれた土壌がそもそも論の問題。先の大戦に限らず、戦争、内戦を含めた世の中の”戦”の齎す哀しみ。哀しみの痛みを再認識。これが著者のメッセージではなかろうか。2017/05/22
翔亀
36
【沖縄68】小説と言うものの力をまざまざと見せつけてくれる傑作。単純に沖縄戦の悲惨さを語り継ぐことや、ひいては一般に戦争というものがもたらす非人間的な政治状況を訴えているだけではない。沖縄戦を、過去の歴史的事実としてでも、戦争の教訓としてだけでもなく、いま日本でどう向かい合うかひとつの実践をしているかのような読書体験を与えてくれる。■小説の舞台は沖縄戦の最中の、本島中部の小さな島。あっけなく米軍に制圧され、統治された村。米軍は村人に食料を与え、治療をほどこすが、そこで起きた数人の米兵による少女暴行事件。↓2022/04/04
燃えつきた棒
34
太平洋戦争末期の沖縄。 ある夕、島の浅瀬で貝を採っていた少女達の方へ対岸から数人の米兵達が泳いで来た。彼らは波打ち際の少女達のところまでやって来ると、小夜子を拉致しアダンの茂みの陰に連れ込んだ。 この事件の後、米兵達はジープで部落にやって来ては、男達が見ている前で女達に乱暴を繰り返したが、ライフル銃ににらまれて男達は動けないままだった。/ 【米兵達が海に飛び込んだ直後、崖の下の岩場から一人の若者が銛(もり)を手に海に走っていくのが見えた。褌(ふんどし)姿の若者は海に入ると、銛に付けた紐を腰に結わえ、→2024/10/16
よむよむ
30
これが沖縄の現実か・・・無数にあった事件の一つにしかすぎないのであろうが、あまりにも酷すぎる。当時の人々に深い傷を負わせ、子孫とそれにつながる人々を苦しめ、さらに何十年経とうとも私たちに問いかけることを決して止めない《戦争》 平和なこの時代に生まれた私たちに与えられた一番大きな使命は何だろう?いや、この作品の前では、どんな言葉もただのきれい事にしかならない。小夜子のあの一言が胸に滲みる。2010/10/11