内容説明
伝統的社会秩序における強い葛藤・緊張の中で、人はときに憑霊の病いを発症し、それを契機にシャマンへの道を踏み出す。多様な霊的存在への信仰と峻厳なトランスヒマラヤ高地の自然環境のもと、宗教と生態との相互関係から、シャマニズムと伝統的治療を描く。
目次
第1部 ラダックの歴史と人々の暮らし(西チベットの自然・歴史とラダック王国;村人の伝統的社会生活;農耕と牧畜からなる生態;伝統的食文化;インド独立後の現代化と政治的・宗教的・文化的葛藤)
第2部 ラダックにおける病いと治療(村人にとっての病い;アムチの医学理論―病因論、診断法、薬物理論;アムチの治療実践;シャマンになるとは;シャマンの儀礼的行為;現代化の中で生きるシャマン)
著者等紹介
山田孝子[ヤマダタカコ]
京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。京都大学理学博士。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は宗教人類学、文化人類学、シャマニズム研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mittsko
3
1980年代の現地調査にもとづくラダックの民族誌。ラダック地方は現在インド領となっているが(ジャンム・カシミール州の東半分)東のチベット高原から西のバルティスタン(パキスタン領)までひと続きの自然文化圏を形づくっている。ラダック近辺は「西チベット地域」と呼ばれ、チベット語が多く話されていること、本書ではじめて知りました。本書は二部構成。第一部は生態人類学的な「歴史と人々の暮らし」、第二部は、著者がとくに専門とするシャマン、伝統医学、民族医学など「病いと治療」。実に堅実な、400頁超の大部の一冊です。2021/03/12