感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
singoito2
8
様々な情念や衝動を理性によって制御するための修練や日頃の心がけなどを述べる論文が多く、通俗的倫理のススメのような印象を与えるけれど、その目指すところは世俗の成功や安心立命ではなく、哲学の道を辿り、徳の高い生を追求するところにあって、そこにこそプルタルコスの魅力が発しているのです。ボク的には「お喋りについて」が一番、面白かったです。2024/04/22
roughfractus02
6
これまで歴史的スパンから徳について語ってきた著者だが、本巻では、日常生活の様々な場面(怒りと心の平静、兄弟や子供との関係)から始まり、悪について、無用と思える行為(お喋りや詮索好き)についての徳のあり方を、理(λόγος)の観点から対話形式で議論する。一方で著者は、学んで得るという理(λόγος)の本質を日常全体に敷延せず、理の適用範囲を確定しようとする(「徳は教えられるか」)。倫理が哲学と異なるのは、行為や関係から成る徳は素質、習慣、理の三者から成っており、理そのものは徳の一部に留まるという点にある。2019/06/20