目次
1 亭長時代の劉邦(劉邦はどんな人か;亭とは何か ほか)
2 民間勢力の蜂起と秦帝国の打倒(陳勝・呉広が旗揚げする;劉邦が挙兵する ほか)
3 劉邦と項羽の天下争奪(項羽の天下配分策;劉邦の東進と漢帝国の萌芽 ほか)
4 漢帝国の経営―皇帝となった劉邦(劉邦の皇帝即位;皇帝としての儀式と教養 ほか)
5 劉邦の死前後(大風の歌;劉邦の死 ほか)
著者等紹介
堀敏一[ホリトシカズ]
1924年静岡県生まれ。明治大学名誉教授
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感想・レビュー
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BIN
6
劉邦の生涯を史記や漢書をベースにしつつ、先行研究を取り入れて書かれた伝記。本文自体は一般向けに書かれていて、時にマニアックなことも書かれているものの普通に読める。項羽が皇帝にならなかったことについて深く考えたことはなかったが、整理されておりわかりやすかった。だから西楚の覇王なのかと納得した。2017/06/25
ジュンジュン
5
副題どおりの”ものがたり”風劉邦伝。子供の頃好きだった少年向け偉人伝のわくわく感を、歴史学の領域を意識しながら再現したそうだ(あとがきより)。そんな著者(故人)の想いがひしひしと伝わる良書。本文200ページ足らずで、垓下の戦いがちょうど真ん中とバランス良くまとまっている。2020/09/19
GEO(ジオ)
4
再読。漢帝国の礎を築いた劉邦の伝記。十年ほど前の作品ではあるが、中国史を専門に研究してきた大家の著者だけあって、いまでも非常に学ぶところは多い。また、文章も非常に読みやすくなかなかの良書。惜しむらくは著者がすでに故人であり、著者の新しい著作が読めないことか。2016/01/18
佐藤丈宗
0
劉邦といえば項羽だが、この本では二人の争いにはそれほど力点を置いていない。「ものがたり漢帝国成立史」という副題が如実に表している。平易な本文ながら、しっかりと専門研究にリンクした註釈がつけられているので、あとがきにも書かれているように一般読者から研究者まで読めるような一冊に仕上がっている。始皇帝・項羽以前の王侯貴族によって造られた政権から変化して、実は本名すらわからない劉邦という下々の人間が造りあげた体制が後の中国史に与えた影響に思いを巡らせられる。2017/03/06
韓信
0
劉邦の生涯をたどり、漢帝国の成立を描く評伝。刊行時までの研究成果を存分に反映させた学術的水準の高さと、一般むけの読みやすさを併せ持つ力作。特に亭長時代の劉邦に焦点をあて、秦漢代の地方政治の在り様と、そこに生きる劉邦と仲間たちをいきいきと描いていて面白い。また、身分制の研究を続けていた著者だけあって、庶民の底辺から起こった劉邦集団による漢の建国を庶民階級の台頭とみて、劉邦の皇帝即位にも、後世の儀式とは異なる諸侯王による推戴という原初的・民衆的な性格を認めている点と、当時の任侠的風潮への言及が多い点が印象的。2015/07/31