出版社内容情報
密室殺人の被疑者となった青年の立場は圧倒的に不利。弁護に当たるH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして間然するところのない絶品、創元推理文庫に登場!
内容説明
被告人のアンズウェルを弁護するためヘンリ・メリヴェール卿は久方ぶりの法廷に立つ。敗色濃厚と目されている上、腕は錆びついているだろうし、お家芸の暴言や尊大な態度が出て顰蹙を買いはしまいかと、傍聴する私は気が気でない、裁判を仕切るボドキン判事も国王側弁護人サー・ウォルターも噂の切れ者。卿は被告人の無実を確信しているようだが、下馬評を覆す秘策があるのか?
著者等紹介
ディクスン,カーター[ディクスン,カーター] [Dickson,Carter]
アメリカ、ペンシルヴェニア州生まれ(1906‐77)。本名ジョン・ディクスン・カー。1930年に予審判事アンリ・バンコランを探偵役とした『夜歩く』を発表
高沢治[タカサワオサム]
1957年茨城県生まれ。東京大学、同大学院人文研究科に学ぶ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
419
カーター・ディクスン名義の代表作。私の中では、とにかく入手困難でどこにも売っていない印象があった一冊で、その癖、トリックだけは広く知れ渡ってしまっているタチの悪さ。そこまで評価の高くなかった作品だが、改めて読むと、『火刑法廷』や『三つの棺』よりも好きかもしれない。その2作のような雰囲気作りを拝して、しかも法廷ものという事で、カー成分は低めかもしれない。しかしそこが現代の読者にとっての取っつき易さに繋がっており、変に驚天動地の密室トリックを期待せずに読めば、サスペンスもあり芸の細かい秀逸な本格ミステリ。2017/04/27
Kircheis
406
★★★★☆ H・M卿シリーズ第7作目。 密室内で殺人が起こり、死体と一緒に見つかったアンズウェル青年が殺人罪で起訴された。久々に弁護人として法廷に立つH・M卿は圧倒的不利な中で弁護できるのか? 無罪の被告人を追い詰める検察と弁護人の手に汗握る攻防はやはり面白い!しかし、証拠の提出や証人喚問が不意打ち過ぎて現実の裁判ではあり得ない。まぁ『逆転裁判』みたいなノリで楽しむべきだろう。 犯人は当てやすい方だと思うが、肝心の密室トリックはカーらしくトンデモ系で個人的には微妙。 しかし全体としてはかなり好き。2024/02/04
セウテス
97
ヘンリー・メリヴェール卿シリーズ第7弾。〔再読〕メリヴェール卿が、本職である弁護士として法廷で闘う貴重な一冊。目を覚ますと密室の部屋の中に、矢で胸を刺された遺体と2人きりであった青年の弁護を行う。ユダの窓は、カー氏の代表的な密室トリック。ですが本作はユダの窓その物以外にも、犯人探しの推理を堪能できる上、法廷での無罪を証明するというやりとりが、存分に読み応えある傑作だと言えます。その解明の手順が魅力ある物語であり、その法廷戦術のクライマックスはカー作品のベストの一つ。巧妙という言葉が、正に当てはまります。2019/01/28
おたま
78
カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)の小説はこれが初読み。ほぼクイーンやクリスティーと同時代の作家であり、内容は濃密だった。法廷小説であり、かつ密室、フーダニット、そして「ユダの窓」の秘密と幾重にも重ねられたミステリーに興味は尽きない。探偵役としての、弁護士ヘンリ・メリヴェール卿の人物像も大変興味深い。それらによって、次第に起きた事件が明らかになり、裁判の行方に引っ張られてついつい読んでしまう。「ユダの窓」とは何か? そして、起きたことの真相は何だったのか? やはりミステリーの名作の一つ!2025/03/10
aquamarine
71
プロローグの事件時の被疑者視点以外は殆どが法廷でのお話。トリック(有名ですが私は結び付かなかった)を楽しむより法廷ミステリとしてとても楽しめました。プロローグで引っ掛かる点があったこともありグイッと掴まれて、あとはH・M卿の弁護に圧倒されながらぐいぐいと読み進めていきました。見えているものが見えている通りでなかったり、少し遠回りすることで優しさを感じたり、人間関係の浮き彫りになっていくところも素晴らしかったです。また巻末の瀬戸川猛資、鏡明、北村薫、斎藤嘉久4氏のミステリ談義が本当に楽しそうで素敵でした。2015/10/27