内容説明
この小著は、われわれの歴史学の著作『隆盛と危機―中国封建社会の超安定構造について』の簡約本である。すでに70年代初頭から、われわれは、社会構造の変遷をマクロに研究する場合には、中国史が絶好の実例になるであろうという信念を抱いていた。そこで、中国封建社会の構造の分析から着手し、サイバネティックス、システム理論の方法を大胆に用いて、中国2000年来の歴史を改めて見なおした結果、われわれは既往の歴史学研究とは異なる結論に到達したのである。
目次
第1章 中国封建社会の宗法一体化構造(社会組織の新しい研究視角;構造の異なる二つの封建社会;一対の同型構造体―宗法的家族と国家組織)
第2章 調節機能の喪失―組織攪乱力の増大(官僚政治の構造―皇帝権力の増幅と権力のピラミッド;土地兼併―経済構造における組織攪乱力;官僚、悪覇地主の横行)
第3章 大動乱と社会の崩壊
第4章 特異な修復メカニズム
第5章 周期的動乱と停滞性―超安定システム(欹器と社会変動のメカニズム;王朝崩壊前の「偽資本主義」の出現;脆性瓦解とその悲劇的結末)
第6章 攪乱、衝撃と準安定構造(魏晋南北朝期における一体化調節機能の喪失;大一統の分裂、貴族化、九品中正制および荘園経済の発展;中国の歴史への新しい見かた)
感想・レビュー
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日暮里の首領様
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欧州や日本などのように、古代の「統一帝国」が封建的な群雄割拠に吸い取られたわけでもなく、始皇帝以来何度も統一帝国の回復に成功し、特に北宋以来は安定した統一秩序を維持してきた中国。この「大一統」は、いかなる原理によって支えられているのか。それを「中途半端」な小農・地主経済と、その上部構造としての官僚制・「統一的信仰」としての儒学に求める名著。こういう見方はアルチュセールあたりに影響受けたんか知らん。手法自体は素晴らしいのだけれども、しかし究極的な「大一統」の要因の説明としては、『銃・病原菌・鉄』に劣る感。2012/11/28