出版社内容情報
中学受験を乗り切るための、塾選びと活用法、さらに小学校四年生までの家庭での国語学習などについて具体的かつ懇切丁寧に解説。国語専門塾で多くの生徒を指導する和(かのお)ゼミナールの武本貴志先生が保護者の悩みにお答えします。
《はじめに》
中学入試での塾選びや塾との付き合い方、そして家庭でも勉強についてこまっている方が多いと思います。この本では、おもに国語の立場からこれらの点を考えます。
受験国語の勉強は精密力(文章を正確・精密に読み書きする能力)をやしなうためにするもので、具体的には「課題文を理解すること」ではなく「設問を解くこと」です。設問を解く練習をかさねて精密力が身につけば、むずかしい文章が理解できるようになり、結果的にテストで得点できるようにもなるのです。
したがって中学入試の受験勉強といっても、なにか特別なことを学ぶわけではありません。設問を解く練習をかさねて精密力をマスターすれば合格答案が書けるようになります(このことについては拙著『中学受験の国語論』にくわしく書きました)。
やはり中学入試に挑戦する以上は合格すべきでしょう。そして合格を勝ち取るためにはそれなりの戦略や情報が必要になります。
それでは「入試合格のための戦略や情報」というと、どのようなものをイメージされますか?おそらく塾の授業やテキスト、模擬テスト、偏差値、合格可能性数値、入試過去問、市販の問題集、受験関係雑誌や学校案内……といったものだと思います。
これらの大半は塾やテスト会社や出版社、つまり専門業者の受験指導システムや発信情報で、受験生や保護者はこれらを一方的に利用する立場にいるのではないでしょうか。
たとえばA中学の志望者が「A中学合格者100人達成!」という広告を見れば「すごい塾だ」と思うでしょうし、「A中学対策講座」という授業があれば「受講しないと合格できない」と感じるでしょう。そして模擬テストで「A中学合格可能性10%」と判定され、面談で「合格ラインに偏差値が10たりませんから志望校を考え直してください」といわれたら……それこそ絶望的な気持ちになると思います。
しかし本当に「A中学合格者100人達成!」がすごい塾で、本当に「A中学対策講座」を受講しないと合格できなくて、本当に「A中学合格可能性10%」「合格最低ラインに偏差値10不足」だと絶望的な気持ちになる必要があるのでしょうか?
受験勉強がはじまると、こうした根本的なことを考える余裕がなくなります。そしてここからさまざまな誤解が生まれ、勉強の本質を見誤ったり、効率のよくない努力に時間と労力を費やしたり、家庭学習や親子関係に悪影響をおよぼしたりするのです。
本書では中学入試の受験勉強に関するさまざまな事項を考えていくうえで、受験国語の勉強には直結しない項目も取り上げますが、志望校に合格するため、そしてなにより受験国語の勉強におちついて取り組むために大切なことだと思います。
中学入試は受験国語を勉強する絶好の機会です。せっかく多大な犠牲をはらって中学入試に挑戦するのですから、「受験勉強の結果が志望校の合格証書だけ」というのではかなしい気がします。
なお、中学受験の功罪についてはさまざまな議論がありますが、ここでは論じません。本書では中学入試に挑戦することが家庭として決まっていることを前提とします。
また最近の中学入試では二極化が進んでおり、少子化などの影響で定員割れや事実上無試験入学が可能な学校も増える一方で、人気が集中する学校にはこの傾向はまったく見られません。むしろ競争は激化する傾向にあります。そこで本書は実質的に競争が行われるケースを想定して話を進めます。