出版社内容情報
外国人社員が自分の部下となった時に必要となる英語をシチュエーション別に収録。「外国人が求める上司像」「仕事に関する感覚の違い」「トラブルの起こる文化的背景」など、外国人と働く上で不可欠な背景知識も豊富に解説してあります。
《はじめに》
「外国人部下をいかにマネージメントするか」。このテーマに興味をもったという共通点はあったとしても,本書を実際に手にとっている読者のみなさんのおかれている状況はさまざまでしょう。まずは次の5つのケースに目を通してみてください。いずれかのケースが自分の状況と似ているかもしれません。
【ケース1】 ある大手日本多国籍企業の大阪本社に勤める山田さんは,外国人社員を何人か管理したことがあります。「結構使いにくいですよ。文句ばかり言っているし,離職率も高い。どうやったら満足してハッピーに働いてもらえるのか謎です」。
【ケース2】 ある日本企業のアメリカ子会社に出向している広川さんによると,アメリカ人部下の管理が頭痛の種になっているそうです。「詳細にわたって指導しないと動きません。それに,『フィードバックがもっと必要だ』とよく言ってきて,それに対応するのは疲れます」。
【ケース3】 外資系企業の日本支社でマネージャーをしている川上さんは,この会社に入って初めて外国人部下を持つようになりました。「この職場は国連のようです。世界各国から人が集まっています。僕の10人の部下のうち,イギリス人が3人にを並べて働いたことのない谷口さんはとても心配しています。
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本書は,このような立場にいる日本人のために書かれたものです。
私たちは経営コンサルタントとして,外国人部下を扱いあぐねて苦労している何千人もの日本人マネージャーを対象としたセミナーや一対一のコーチングを行ってきました。私たちがコーチングをしているマネージャーの勤務地,業界,職種,会社の規模,そして部下の国籍はさまざまですが,彼らの悩みの種になっているテーマは不思議と共通しています。部下を効果的に管理するにはかなり微妙なニュアンスを持った表現を使う必要がありますが,多くの日本人はそれを学ぶ機会がほとんどありません。そのため,慣れない表現を使って部下を指導するという難しさ自体がフラストレーションの原因になりがちです。そのうえ,外国人部下は上司からの言葉に非常に敏感である傾向が強いので,不適切な表現を使うことで誤解が生じやすくなるという危険性もあります。
また,上司と部下の関係のあり方や上司の役割に関して,日本の習慣と外国の習慣の間には大きなギャップがあり,その習慣の違いとい図ればいいのかを確実に身につけることができます。本書を利用することによって,読者が外国人部下とのトラブルを避け,彼らと良い関係を築きながら効率的かつ効果的に働くことができたら幸いです。
ビジネスのグローバル化に伴って,今まで自分の分野は国内に限定されていると思っていた方でも,外国人と密接に働いたり外国人部下を持ったりする状況は,避けられないものになってきています。ひと昔前では珍しい存在であった外国人ですが,最近は日本国内のビジネスの至るところで見かけられ,将来,この傾向は加速する一方となるでしょう。
ここにひとつの大きなパラダイム・シフトを見ることができます。つまり,これまで日本の強みは「粒選りの労働力」というところにあったのですが,現在進行中の大きな歴史的変化が「労働力の多様化」を余儀なくしているのです。従来の「粒選りの労働力」を指揮する指導力と,一見混沌とした「多様な労働力」を指揮していく指導力とではまったくその質や哲学を異にします。これからの管理者に必要とされるのは混沌を指揮していく力,「1+1=3」にしていくような人材活用の管理力です。これは何も外国人管理だけに限りません。労働力の多様性は,性別までご連絡下さい。なお,当社のセミナーやコンサルティングについてご興味をお持ちの方は,当社のウェブサイト(http://www.japanintercultural.com)をぜひご覧下さるようお願いいたします。
2005年10月
ロッシェル・カップ 増田真紀子