内容説明
「ムラ遊び」が盛んで平和な沖縄の里から、日本植民地台湾へ進学。日本の台湾統治五十年。そこにあったのは「差別社会」と「皇民化教育」。緊張の戦時中で見つけた「台湾民俗」の素朴さにひそやかな安堵と郷愁。もうすぐ戦後六十五年。台湾から一番近い沖縄県。歴史的にも因縁が深い。時代は揺れ動く。いま沖縄から台湾を語らねば多くが消えてしまいそう。そのような思いをつのらせながら「沖縄」と「台湾」を描いた植民地体験記。ジャーナリストがこころ振るわせて綴る16編。
目次
古い文化を残す手登根ムラ―ぬか雨に里の香りが仄見えてのどかなる夜を遠く包めり
悲しみの生い立ち―悲しみを押し隠してか死の恐怖言はざるままに母は逝きたり
青白い光が揺れていた―とき過ぎて夜の寝覚めに父母の墓を訪ねて言ふこともなし
田舎の農より街の昼寝―優柔の領域超て人生のユメだけ持ちてさまよひ歩く
高まる戦意高揚と国防意識―いにしへの心にひかれ文読めど至らぬままに擲ちにけり
差別の中の台湾を体験―荒海の蓬來島に青春の夢をかきたて学び舎は建つ
「死を教える」ための軍国教育―軍国は「差別」隠して国々に八紘一宇の文字躍らせる
日本統治の基礎づくり―台湾の生活習慣押しのけて“大和魂”宙に飛び交ふ
台湾歌謡「雨夜花」と「サヨンの鐘」―植民のひかりの蔭にひそみたるかすかな歌を吾は歌へり
台湾の民俗から沖縄を見た―繁み生ふる異郷の里に人の香の充ちて向き合ふ民俗の里
学生は兵、出陣から敗戦まで〔ほか〕
著者等紹介
宮城鷹夫[ミヤギタカオ]
沖縄県佐敷生まれ。ジャーナリスト。台北師範学校本科卒業。植民地時代の台湾で皇民化教育を受けつつ民俗と差別社会を体験。戦後、沖縄タイムス記者、論説委員長、主筆、代表取締役専務、タイムス総合企画社長を歴任。沖縄県文化功労賞(2001年)、「地域文化功労」で文部科学大臣賞受賞(2004年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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