感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
azimuth
3
「蝶々夫人」×「フランス人外交官が中国のためのスパイ行為で罪に問われ、その献身の相手、恋人の京劇役者が20年間性別を偽っていたと明らかになった」という実話。西洋と東洋の力関係の変遷とかセクシュアリティの揺らぎとかが主題なんだろうけど、「人は見たいものを見る」と総括していいだろう。変装を変装と知りつつ愛するとき、矛先が中身なのか皮なのかは変装が解けてみるまではわからないわけで、前者と思い込んだ我々(とおそらく京劇俳優)を手酷く裏切って、外交官は中身を失いぱたぱたひらめく皮を愛撫しながら蝶々夫人になりかわる。2015/02/14
nightowl
1
女性のような(生物学的にいえば)男に恋してしまい、機密文書を奪われたフランス人。彼は何故そこまで惚れ抜いてしまったのか。西洋人の東洋人に対する見方をやんわり皮肉っているのが魅力。最終的に倒錯的な方向へ走るのがちょっとしたカタルシス。初演の装置と衣装のデザインはなんと石岡瑛子(参考: https://onl.sc/R96wFzP )!!自分たちの文化に対して自己陶酔的な称賛をせず、世界からどんな風に見えているのか考えることの大事さを知る。内野聖陽&岡本圭人コンビで2022年舞台化。2022/05/25
わきうし
0
男だからこそ、理想の女が演じられる。東洋人だからこそ、西洋人が思う東洋人を演じられる。大まかなあらすじしか知らずに読んだので、最終的にソンがルネに本気で惚れてしまうのかと思っていたら……ぶん殴られた!私も見たいものを見ていたのだと思い知らされる。何故気付かないのか?気付いていたのか?美しい夢があれば人は些細な事に気が回らない。2024/07/09
アルハ
0
冴えないフランス人外交官が20年の恋に落ちた相手は、蝶々夫人の如く貞淑かつ一途な美貌の京劇女優……の虚像。なぜ気づかなかったのか?と恋に狂い機密情報を易々と渡した彼を国中が嘲笑する中、本当の姿を見せつける「彼女」を目の当たりにした外交官は真実を拒絶し、自らが虚像に成り代わる事を選択する。 西洋が抱く幻想の東洋(しかしそれは差別的目線に満ちている)の世界に誘う前半から、急転してその東洋の象徴が牙を剥く後半、そしてまた幻想へと回帰する結末はガリマールの夢をそのまま見せられているかのような気持ちにさせられる。2022/03/22