内容説明
ポスト・モダンをめぐり論議騒然たる昨今、真に本質的な問題はどこにあるのか。著者は認識の深みから“近代日本”に根底から疑問を呈し、正宗白鳥、小林秀雄、井上良雄、福田恒存らの精神的苦悩と批評の命脈をたどり、吉本隆明、江藤淳、磯田光一、柄谷行人らを読み解く。また、大江健三郎、中上健次、森内俊雄、森敦、さらに島田雅彦、小林恭二ら、現代文学の中核と最前線を検証。巻末に、わが近代精神史を総括し、いま「批評とは何か」を問う書きおろし30枚。若き文芸評論家の、近年の主題の螺旋的展開とその深化を1冊に集めた。
目次
「近代の超克」とポスト・モダン―福田恒存と現在
「1つの秘密」をめぐって―正宗白鳥と小林秀雄
思想の果てにあらわれるもの―吉本隆明と宗教的磁場
「歴史」のデーモン―江藤淳の「戦後」
逆説的な近代主義―磯田光一の倫理
「歴史」意識の行方―小林秀雄と柄谷行人
批評の宿命―井上良雄と近代日本の批評
「歴史」について―大江健三郎『人生の親戚』
異貌の言葉―中上健次『千年の愉楽』『日輪の翼』『讃歌』
近代小説の零度―島田雅彦『天国が降ってくる』小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』
他者と自由―島田雅彦『夢使い』
阿字観のエクリチュール―森敦『われ逝くもののごとく』『浄土』
神・父性の逆説―森内俊雄『骨の火』『夢のはじまり』
批評とは何か