内容説明
サーカスのジンタもやれば、日蓮宗の坊さんもやった。昭和初期、15歳で山国の町に出現したカフェの、6つも年上の美女に恋い焦がれ、東京へ駆落ちしたのが18歳。アメリカへ出稼ぎに行っている瞼の母から送られる舶来品に恍惚し、音楽や文学に目覚め、生涯夢みる人となった。恋の神話は崩れ、帰国した母にも幻滅、無頼渡世に身を投じながら、戦前に話題作『アメリカの母』、戦後に従軍記『野戦』、珠玉の童話『捨てられた白鳥』などを書く。後年は妻子も逃げ出し、独りぼっち。だが、佐藤春夫、窪田空穂、太宰治、きだ・みのる、三島由紀夫らにも接し知遇をえた異色作家、木田紀雄の足跡をたどる。世にも稀れなる異色作家の足跡。