内容説明
激動と混乱の60年代アメリカのポストモダン的状況で活躍した8人の作家の個別的テキストの分析を通して、そこに現れた60年代の人間の状況を考察したもの。
目次
ジョン・バース『旅路の果て』―主体の崩壊、あるいは、生きることのアポリア
ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』―幽閉するロゴスへの抵抗
トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』―エディパの“もう一つのアメリカ”探索
カート・ヴォネガット,ジュニア『スローターハウス5』―浮遊するリアリティ
ケン・キージー『カッコーの巣の上で』―無効にされる対抗軸
ウォーカー・パーシー『映画狂』―「虚構」のなかの「現実」
ジャージー・コジンスキー『ビーイング・ゼア』―退却するアダム
ウィリアム・ギャス『オーメンセッターの幸運』―虚構に存在を求めて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
104
50年代は赤狩りが米全体を席巻していくが、大多数の中産階級は無関心な態度で沈黙する。反共を掲げたアーヴィングやミルズなど知的良心派が体制を批判するも学生や一般民衆は行動を起こさない。そこに現れたのが、サリンジャーなどのビートジェネレーションの作家たち。文明社会に抗議したが、自己の内部に最後の拠り所を求めた。一種の実存主義のモダニズム。60年代は、キューバ危機、ベトナム戦争、ケネディ、キング牧師らの暗殺…、アメリカ社会の暗い狂気が明らかになる。圧倒的国家権力によって個人は押しつぶされるポストモダニズム時代。2015/11/18
へんかんへん
1
旅路の果て借りてこよう 米ソ冷戦下の中近代合理主義による秩序、統制が人間性を圧迫していることに対しての押しつぶされるものたちの叫びを作者ごとのアプローチで書かれた60年代アメリカ小説。その書評8篇2014/02/20