内容説明
ジョン・イームズはエレナーに会うためフィレンツェへ。トゥーグッド弁護士は小切手の謎をどう解くのか?「バーセットシャー年代記」ついに完結!本邦初訳。
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。現在、福岡女学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
122
この世界にもっと浸っていたかった。本を閉じてもバーセットの彼らのその後は続いている。気難しくて少し厄介で純真な主教を中心に、参事会長夫妻が、大執事の家族が、街の人々が暮らしている。頑固すぎてもはや頭がおかしいとしか思えないような男のために、なぜこうもまわりの人が半ば無私で動いたのか。クローリーには、対峙せずとも、彼を見る人に自らを省みることをさせる何があったのだろう。老いたハーディング氏が最期までもつ穏やかな心。人の心の機微を、どんなことに人の心が左右されるかを描くトロロープの人物描写を堪能した。2018/05/31
NAO
52
窃盗容疑に関する謎解きは、ある程度の予想ができるうえに、その原因がかなり唐突な感じで明らかにされるため、ミステリのような構成でありながら、ミステリにはなりきっていない。クローリーの自分が無実であるという強い信念は分かるが、あまりにも偏屈で独善的なところがあり、彼を救おうと奔走する人々ほどには彼に共感したり、彼を後押しする気分になれないのが残念だ。イギリスの話には、この手の頑固者がよく出てくるが、それがイギリス人の特徴的な性格で、コメディには不可欠なのだろう。大団円にグレースとヘンリーの結婚が花を添える。 2016/09/09
ロピケ
6
読み終わってしまった…。本当にシリーズ最終なのね、と作者の最後の語りを読みながら、でも、リリーは?もう少し続き書かない?と説得したい気分になりました。もう、こうなったら、開文社さん、パリサーの方も頑張って出版してくれないかな…。それにしても、クレアラのお母さんが九州弁(宮崎弁?)しゃべってるのが微笑ましかった。訳者あとがきは、この小説や作者、時代背景を知る上で非常にありがたかった!面白くて夜遅くまで読んでいたら、子供に「お母さん、偉いね。」とほめられた。本が分厚いので勉強してるのかと思われたらしい。2016/10/16
きりぱい
6
面白かった。小切手の疑惑がいよいよ決着。運命を共にするしかない家族のことはどうでもいいんかい!と思うほどクローリー氏が頑なで(ちょこっと卑屈でもあり)、自分に厳しいというか信仰の篤さを超えすぎているというか、他にもヘンリーとかリリーとか意固地なキャラが多い。グラントリーがグレースにころっと参るのには笑。プラウディ夫人の唐突さは快哉とはいかなかったけれど、やむなしなのかな。聖職者の立場や英国階級社会の側面、虚栄の人々を描いた物語として本当に面白かった。2巻が一番好きかなあ。2016/10/03