内容説明
盗みの罪で告発された永年副牧師クローリー氏。彼の禄を取りあげようと策動する主教と奥方。牧師を救うため立ちあがったフラムリーの人々。弁護士トゥーグッドやジョン・イームズの活躍はいかに?牧師の娘グレースとグラントリー少佐の恋の行方は?イームズとリリー・デールの恋の行方は?20ポンドの小切手をめぐる謎は誰が解くのか?鍵を握るエレナーはフィレンツェへ。「バーセットシャー年代記」の最後を飾る大長編、本邦初訳!
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
126
19世紀のイギリス文学のストーリーテリングは最高だなと改めて思う。バーセットの街の人達に次々と焦点があたるトロロープ作品はこれがシリーズ最後らしいので、途中の何冊かを抜かしているのを後悔。バルザックのように大仰な感じではないが、本当にいそうな人々。この人を信じるのはあの人が信じるから、この男を責めるのは妻に世話を焼いてもらえなくなるから…等々、行動理由として今の時代の日本人でも頷けることがたくさん。そして小切手の謎はいかに。ちなみにトューグッド氏は英語だとToogoodなのかな。あまりにもいい人だ。2018/04/19
NAO
49
小切手を盗んだ罪で告発された永年副牧師クローリー。この不祥事でクローリーの禄を取り上げようとする独断的なバーチェスター主教側と、クローリーを信じる人々とのいがみ合いが始まる。偏狭なうえにぼんやりで、自分がどこで小切手を手に入れたのかも思い出せないクローリーにはどう見ても勝ち目がないのだが、この先劇的な展開があるのだろうか。クローリーの娘グレースとグラントリー大執事の次男ヘンリーとの恋は気高く微笑ましく、二人のためにもクローリーは無実であってほしいのだが。2016/09/08
きりぱい
4
面白かった。前作で脇役だったクローリー牧師が小切手を盗んだ罪に問われる騒動。本当に盗んだのか、結局盗んだことになるのか、それとも?と、そもそも本人に記憶がない。恥ずべきことはないと、家族や好意の者たちが助けようとしても受け入れず、疑う者はますます敵に回し、貧困と災難で特に妻が痛ましすぎる。いい加減誇りが高すぎるよと思うのだけれど、プラウディ夫人に対してはスッとしたり。娘世代の恋の成就も気をもませ、せっかく面白かったのに、まさか六連作の最後は上下巻分けて刊行されるとは。下巻はいつ読めるんだろう。2015/02/09
Hotspur
2
「バーチェスター年代記」最後の作品(1867)。主な舞台はバーチェスターに戻り、馴染みのキャラがほとんど総出演。①クローリー牧師の小切手詐取疑惑、②相変わらず続いているジョン・イームズのリリーに対する求婚問題、③グラントリー少佐とグレース・クローリーとの婚姻問題に加え、④新たなキャラであるロンドンの画家コンウェイ・ダルリンプルを巡るプロットが重なる。最初の三つ(①~③)は前作までとの関連があるが、④のコンウェイ・ダルリンプルのエピソードはやや唐突の感があり、どのように収束を見るのかは下巻に譲られる。2022/02/16