内容説明
十九世紀中葉の政界と社交界を背景に描かれる四組の結婚。大夜会で対峙するラフトン卿夫人とオムニアム公爵。社交界の花グリゼルダ・グラントリーをめぐるラフトン卿とダンベロー卿の恋の駆け引き。巨額の遺産相続人ミス・ダンスタブルをえようと画策する国会議員サワビー氏の顛末は?
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。現在、北九州市立大学外国語学部教授。日本英文学会監事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロピケ
7
毎回ドキドキしながら、リクエストを出している。本当に図書館には感謝してもし足りない。こんなに分厚いのにもかかわらず、今回もイライラ感を掻き立てられながら、ずんずん読みました。マークがズブズブと深みに嵌り、その雪だるまがどんどん大きくなっていく様子が何とも。グレシャム夫婦は『ソーン医師』に出てきたメインキャラクターだったはずなのに、どんな話だったか見事に忘れた。ミス・ダンスタブルは辛うじて覚えていたものの、こんな展開になるとは予想もしていなかった。ルーシーも良いけど、クローリー夫人の逞しさを見習いたい。2013/09/17
きりぱい
4
待望の四作目。前作から一年ぐらいか。独立した作品としても読めるだろうけれど、ミス・ダンスタブルやバーチェスターの大執事、ソーン医師などなど今作までの印象深かったキャラがかなり大勢関わって登場してくるので、終わりと思っていた話の進展が見られて面白い。ここでの主役は、貴族の友人の親がかりで若くして聖職録を与えられマーク。それだけでも感謝なのに出世欲に心を動かすもんだから結構イライラ。クローリー牧師も哀しいまでに頑なに誇りが高い。意外にラフトン卿夫人が嫌いではない。特に乗ってくる後半からが面白かった。2013/07/01
Hotspur
2
「バーチェスター年代記」四作目(1861)。今回は前作と違って重要なキャラの再登場が目立つ。バーチェスターの宗教界の面々とか、ソーン医師、ミス・ダンスタブルとか。しかし焦点の一人は、政治的党派の間で翻弄され、かつ欺されて融通手形に署名する主人公マーク・ロバーツ牧師で、彼の金銭問題が物語の縦糸となる。中央政界の動向とバーセットシャーとの関連が浮上し、前作までより作柄が大きい。そして、前作のメアリー・ソーンと同様の役回りを果たすのがルーシー・ロバーツで、彼女の婚姻問題が物語の横糸。変わらず幸福な読書体験。 2022/02/10