内容説明
未亡人となった美女エレナーを獲得するのは新主教の付牧師スロープか、イタリア育ちの彫刻家スタンホープか、大執事がオックスフォードから呼び寄せたアラビンか。個性的な作中人物が賑やかに現れてビクトリア時代を再現する。
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。現在、北九州市立大学外国語学部教授。日本英文学会監事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
58
新参者と地元の聖職者、低教会派と高教会派。聖職者たちの利害関係が入り乱れるバーチェスターの主権争いに、大金持ちで美しい未亡人エレナーの争奪戦まで絡んで、騒然とするバーチェスター近辺のドタバタ劇。主な登場人物がみな強烈に個性的で、その中でも、支配者意識の強いプラウディ夫人と、野心満々で自惚れ屋で俗物根性丸出しのスロープの個性が光っている。楽しく読めたけれど、エレナーが、悪役じゃないのにプラウディ夫人に負けず劣らず鼻持ちならなかった。まあ、こうじゃないとコメディにはならないのだけれど。2016/09/02
まふ
17
文句なく満点の読後感。最近読んだ長編の中でもベストの一つといえる。ロンドンに近い田舎町の英国国教会の牧師たちの争いを実に面白く描いた。高教会派と低教会派との争いの中でオクスフォードとケンブリッジとの争いでもある様々なレベルの抗争が楽しく描かれた。主人公女性のエレナーに降りかかる迷惑を乗り切りアラビンと結ばれる段では思わず涙が出た。本当に良かった、と思う。それだけにこの書はある意味でのリアル感があり出色の小説である。ヴィクトリア朝時代のどの小説よりも密度の高い物語であると思った。まさにワールド・ベストだ。2022/05/04
asiantamtam
17
やっと読み終わった。頑張った感がハンパない。本の分厚さはさることながら、なんせ登場人物が多い。序盤の人物説明と教会内の地位とかが全く想像できないので頭に入りにくかった。宗派とか全然わからないので。しかし中盤からはラブコメみたいになってぐっと読みやすくなるので、そこまでは辛抱。小説途中でトロロープさん自身の感想などが入るのが、普段だったら滅相もないけど、まあ100年以上も前の人だし、ありかな。ラブコメ部分は結構面白かったし、トロロープさん推し(多分)のシニョーラはなかなか面白いキャラクターだった。2019/01/23
きりぱい
7
一年近く待ってやっと出た二作目。前作の記憶が薄いのに厚さは二倍で、少々読み出す不安はあったのだけど、さほど問題なく楽しめるすべり出し。バーチェスターの大執事グラントリーは、主教の父の死でその職を継げる腹積もりが、癪に障る新主教を迎えることになり、前作で慈善院長辞任を余儀なくされた義父ハーディングとともに、今度は新主教付き牧師スロープの狸ぶりに平穏をかき乱される。未亡人エレナーへの個性的な面々のもくろみも加え、弄しても激しても根が聖職者たちの新旧勢力のバトルはどうなるのか、むかむかするほど面白い!2011/07/16
ロピケ
5
この間読んだ、辻邦夫・水村美苗『手紙、栞を添えて』の中でお二人が指摘した通り、ディケンズやサッカレー達の時代の小説には読ませる力があると実感しました。4日掛かったものの一気に読みました。読者を「むかむか」させながら、引っ張って行くというのも一つの手法なのだなあと気付きました。何しろ悪役が人の心理を手玉にとる達人揃い。バーチェスター近辺の原住民達は、次々に罠にまんまとはまってしまうので、悪役に対してむかむかするのは当然なんだけれど、騙される側にもイライラしてしまう(一番イライラさせられたのは、 エレナ ー)2011/09/25