内容説明
かくし味、といってもチーズや料理の話だけではない。パリは、ロランやベケットが闘い、キムラをはじめ画家たちが苦悩し、フーコーやサルトルが思索したその吐息が、またリルケや椎名其二や森有正が自由を求めた息吹がそこここにさ迷っている街である…。
目次
1 ベケット『ゴドーを待ちながら』からドゥルーズの終の住処まで
2 精神の祖国―ドルドーニュ河のほとり
3 美術家の終の住処パリ
4 椎名其二と森有正―パリのユニークな自由人
5 リルケのパリ
6 晩年のロマン・ロラン―光と影
7 パリの駅、メトロ、沿線の街
8 フランス人のエスプリ、チーズの味
9 移民国フランスの仮の住処
著者等紹介
蜷川讓[ニナガワユズル]
戦前の基隆市に生れる。早稲田大学政経学部、同文学部大学院を経てパリ大学に留学。現代フランス文学、比較文学専攻。日本福祉大学教授、早大講師などを歴任。1951年ロマン・ロラン協会を設立。以来、研究誌140号と公開研究会442回主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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渓流
1
日頃ノンフィクション、ルポばかり読んでいる身には、時には文学の香りと味のする本もいいかと、旅行ガイドブックを借りに行ったついでに手にとった、洒落た表紙と洒落たタイトルに惹かれて。著者に纏わる芸術家知識人のパリでの棲みかを訪ね歩きつつ、彼らの事跡やエピソードをパリのかくし味にしながら、フランスの町々、村々を訪れつつ語る散文詩。誠に散文らしく、文が散らばっていて、論理を旨とする本に親しんだ身には、少々イラつくこともあるが、感性の世界に生きる文人はこんな文を綴るのか、などと思い、オヤッと思う箇所を拾い読み。2011/02/14