内容説明
行列力学の誕生からまもなく、シュレーディンガーは電子は波であるという仮定から出発して、微分方程式によってミクロの粒子運動が解析できることを提唱する。行列力学ではハイゼンベルクでさえ解けなかった水素原子の電子構造を、このシュレーディンガー方程式は見事に解法することができたのである。この式は、すでに100年以上前に数学者によってよく研究されていたためでもある。ほとんどの教科書では、いかに水素原子の電子構造がシュレーディンガー方程式によって明らかにされたかという基本過程を詳らかにせず、その解の最終形が与えられているだけである。本書では、その過程を、できるだけ詳細に示した。そのため、ラゲール陪微分方程式やルジャンドル陪微分方程式、その解であるラゲール陪関数、ルジャンドル陪関数などに、かなりの頁数をさいている。それは、量子力学の基本を理解し、さまざまな応用に役立てるのに避けて通れないと考えたからである。
目次
電子の波動性
電子波の方程式
シュレーディンガー方程式の解法―無限井戸
シュレーディンガー方程式の解法―有限井戸
調和振動子
演算子
不確定性原理
トンネル効果
極座標のラプラシアン
水素原子のシュレーディンガー方程式1―変数分離
水素原子のシュレーディンガー方程式2―動径方向の方程式
水素原子のシュレーディンガー方程式3―角度分布関数
水素原子の電子分布
エルミート多項式
ラゲール微分方程式
ラゲール多項式の母関数と漸化式
ルジャンドル微分方程式
ルジャンドル多項式の母関数と漸化式
極座標の体積要素と規格化条件
著者等紹介
村上雅人[ムラカミマサト]
1955年、岩手県盛岡市生まれ。東京大学工学部金属材料学科卒、同大学工学系大学院博士課程修了。工学博士。超電導工学研究所第一および第三研究部長を経て、2003年4月から芝浦工業大学教授。東京海洋大学客員教授。超電導工学研究所特別研究員。1972年米国カリフォルニア州数学コンテスト準グランプリ、日経BP技術賞、World Congress Superconductivity Award of Excellence、岩手日報文化賞ほか多くの賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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