感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春ドーナツ
17
さかしま(逆しま)①さかさま。ぎゃく。②道理にかなわないこと。よこしま。(岩国第七版)***第4章と第12章の訳注を読めたこと僥倖なり。主人公は先鋭化されたオブローモフだと直感した。小栗虫太郎による「黒死館」に対する偏愛描写を想起する。「そして**は、赤い唐辛子の二つの莢のような艶をおびて輝いた」(140頁)「私好み」を置換すると「本書のように陶酔と愉悦をもたらしてくれるもの」になるかも知れない。今度ボオドレエルの詩を書見しようと思う。凄い小説だ。「どのように凄いか」を言語化できなくて、もどかしいけれど。2018/11/24
723
3
喪の宴、黄金の亀の描写、香りの話が好き。あとがきにも記されていた通り引用されることの多い書なので、これで元ネタがわかったものもたくさんありました。人間の食事がもしデ・ゼッサントが考えていたようなものになったら面白いかもしれませんね。現代社会においてはありえない話ではないような気もします。2011/10/24
azur
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博識な彼の薀蓄は半分もわからないが、病弱で神経質で世の中を呪ってばかりのこの男がだんだん可愛らしく思えてくる。 関係ないが、ハードカバーで読んでよかった。古い活字が味わい深い。文庫は文字が窮屈で疲れる。2015/02/09
さーど
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デカダン派にとっての聖書らしい。現代日本人に馴染みのない薀蓄が特徴的。 人間の姿に絶望した厭世家の男デ・ゼッサントのひきこもり生活を刺激的に、時に愉快に描く。 デ・ゼッサントは引きこもりながらも屋敷に自分の世界を作り、そのこだわりを語りながら世俗の人々を批判するが、これがまた熱烈であり作者ユイスマンスの代弁ではないかと思う。 この男捻くれ者でありながらどこか憎めないところがあり、度々滑稽な姿を読者に晒す。最後に彼が発した呪詛は作者による自虐であり、変わり者を自称する者たちへの皮肉だったのではないだろうか。2014/11/19
えろこ
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既存の価値観に左右されないデ・ゼッサントの姿は、周りの評価とか大衆性といったものに捕らわれていた当時の私にとって、とても励みになりました。歯痛で歯医者に行く話が群を抜いてユーモラスです2010/03/07