内容説明
昭和初年代から10年代にかけて革命運動に邁進した小林多喜二、中野重治らの秀作を中心に、たたかいやぶれ、やがて転向という心の屈折をも描く12作品と、プロレタリア文学運動の全体像を見せる池田寿夫の長篇評論を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
7
プチブルのインテリゲンチアがプロレタリア作家になる「過程」。それは母親の愛情を突き放し、女が寄せる愛情を金のために利用し、同志に犠牲を迫ることができる人間になること。だが、他人に大義への献身を迫れるのは自分自身が個人的生活を捨てて生きているから。文学作品がもっぱら記録として読まれるのは、もうそれが文学以外の何ものかであるからだが、その完成にもっとも近い小林多喜二の「党生活者」においては、克服されるものとされながらも情にほだされる瞬間も描かれている。そこにかえって文学的価値が見出せるのも皮肉な話ではある。2021/02/15
-
- 洋書
- MARIE CURIE