内容説明
一六世紀プラハ―ルドルフ二世の宮廷に集った画家、彫刻家、詩人、天文学者、数学者、魔術師たち。彼らはその庇護者に奇怪で謎に満ちた多くの作品を捧げた。昆虫や異国の草花で飾られた祈祷書、禽獣と道具によって構成された肖像画、天球儀や地球儀とギリシア神像が同居する凱旋門。そこには、少数の者にのみ理解されうるシンボルとアレゴリーがちりばめられていた。これまでマニエリズムの名のもとに見過ごされてきたルネサンスの魔術的想像力の真意が、気鋭のワールブルク派美術史家の手によって、はじめて解き明かされる。
目次
第1章 自然の聖別―一五、一六世紀ネーデルラント写本装飾におけるだまし絵の起源
第2章 影の遠近法―投影理論の歴史
第3章 自然の模倣―デューラーからホフナーゲルへ
第4章 自然の変容―アルチンボルドの宮廷的寓意
第5章 ルドルフ二世の凱旋門―一五七七年のルドルフ二世ウィーン訪問時の天文学、技術、人文主義、美術―ファブリティウスの役割
第6章 プラハにおける「古代と近代」―アルチンボルドの素描と絹織物業
第7章 世界の掌握から自然の掌握へ―芸術室・政治・科学
感想・レビュー
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HANA
17
16世紀のプラハにおける美術を論じた一冊。アンチンボルド目的で読み始めたのであるが、それだけに留まらない広範な範囲を扱っていて非常に興味深かった。写本装飾の騙し絵の起源が祈祷書に貼られた聖地の記念物であることであったり、絵画に遠近を付けるための影の研究の事であったり、ルドルフ二世がウィーンを訪れた時の凱旋門とその関係者を論じたものであったり、どれをとっても初めて見聞きするものばかりであった。やはり一番興味深かったものはアンチンボルド。四季や四元素に政治的メッセージが込められていたとは思いもよらなかった。2012/07/02