内容説明
文明発祥以来、人間は恐れ続けてきた。暗闇、自然、天変地異、悪魔、亡霊、戦争、暴力など…。自然の混沌たる力を克服するために、伝説を語り、生贄を捧げ、天国を造り、魔術を操った。荒れ地を耕し、都市を建設し、刑罰を課して、人間自身がやがて恐怖の対象となる。古今東西の「恐怖の風景」をちりばめて、人間存在の根源に迫る。
目次
子供時代に怖ろしかったこと
未熟な人間としての子供
「恐怖のない」社会はあるか
自然を怖れて―偉大な狩猟民と最初の農耕民
生贄と飢饉
中世社会をふちどる暗黒
死病におののく
魔女の出現
人間に由来する恐怖―亡霊
田舎に吹きあれる暴力と犯罪
都市の恐怖
見せしめと処刑
流罪と監禁
空間の広がり
恐怖―過去と現在
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
∃.狂茶党
3
恐怖についての博物誌。生きる不安が際て少ない、楽園の如き原始生活がありえたことなどから、人類に共通するであろう様々な恐怖が語られていく。博物誌的に網羅して、特に結論などはないのですが、とても読みやすい文章で、身の危険、不安などが恐怖心の根っこにあると示している。 2019/11/15
Mentyu
3
人間は何に恐怖を感じてきたのか?という問いに対して、魔女や疫病など15項目に章立てして、記録に残された事例を見ていく。博物誌というタイトルから分かるように、あくまで事例を分析していくのが本書の内容であって、全体を統括する結論を導き出している訳ではない。学術書として受け取ると肩すかし感があるが、教養書としては良書だろう。2018/10/27