出版社内容情報
時は「めぐる」か、「過ぎ去る」か。地質学の基礎を築
いたバーネット、ハットン、ライエルのテキストを読み
こなし、そこに隠されていた時間をめぐる葛藤の歴史を
解き明かす。
■本文より
悠久なる時間は、概念的に把握することがきわめて困難
であり、日常的な経験の枠を超えるものであるため、依
然としてわれわれの理解を妨げる大きな障害となってい
る。
偽りの外挿をやめ、日常レベルの出来事を正しく変換し
て悠久の時間枠にはめ込んだだけの理論でも、いまだに
革新的な理論とみなされるほどである。
ナイルズ・エルドリッジと私が提唱した断続平衡説は、
しばしば誤解されているような、突然の変化を称揚する
過激な主張ではない。
それは、通常の種分化の過程は人間の寿命を基準にする
と氷河の歩みほどゆっくりとしたものであるという正し
い認識を、それとわからないほどゆっくりとした変化を
遂げている長い一連の事象として地質学的な時間枠に挿
入するのではなく、個々の地層において地質学的な意味
で「突然」生じた事象として挿入しようという主張なの
である。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんかい32
1
17世紀から19世紀に生きた、高名な三人の地質学者が有していた世界観を彼らのテキストから読み解く。おそらくグールドの著作中もっとも地味な一冊だが、このへんの話題に興味があれば十分に楽しめる。よく「近代の時間は直線的」というが、じっさいにはいろんな時間観を持った人々が共存していたのだ。グールドはきっと、人文学方面に進んでも成功しただろうな、と思った。2010/03/01
nata
0
単純化された地質学史の「神話」に対して、重要人物3人の著作から、流布しているイメージよりもずっと繊細な彼らの意図を読み解いている。テキストを読むときには(それが書かれた時代や状況が読み手と異なっている場合には特に)どういう背景で書かれたものかを十分に意識しなければならない。2018/09/16