出版社内容情報
フィリピンの残留二世は大方が戦前の日本人移民の子供たちである。太平洋戦争でフィリピンは激戦地となり、フィリピン人犠牲者数は約111万人(フィリピン政府調べ)にのぼる。日本人は軍人・民間人を合わせて約52万人が犠牲になった。戦後の混乱のなか、フィリピンには二世が3800人余り残留したことがわかっている。調査補足できていない二世も含めると4千人以上は残ったと推察される。その多くは戦後は敵性市民扱いを受けて、迫害をのがれ息をひそめるような生活を送ることになる。
戦後80年が経過し、いまも健在な残留二世は80歳から90歳代であと数年もすれば生存者は指折り数えるほどになる可能性がある。
戦後補償や国籍の回復、離散家族の調査など戦後未処理問題は山積みである。
本書は約40年に渡り、フィリピン全土で聞き取り調査を行い、残留二世の戦後を訪ね歩いた記録である。
【目次】
はじめに―『忘れられた日本人』と通底するもの
第1章 引き裂かれた家族
第1節 終戦から五三年後にわかった父の死
第2節 戦争で生き別れた夫婦と親子、四四年ぶりの再会、そして
第3節 低学歴・貧困の世代間連鎖
第4節 三八年目に出会えた両親日本人の戦争孤児
第5節 父から母と娘へ、娘から孫に引き継がれた「日本人性」
第2章 残された課題と新たな動き
第1節 山下大将らとともに処刑された二世、その妹の思い
第2節 ミンダナオ島の山間に残った「最後の日本兵」とその末裔
第3節 現地に残留したフィリピン人妻たちの戦後
第4節 日本に「引揚げ」をしたフィリピン人妻たち
第5節 日本国籍未認定の二世の思い
第6節 日本国籍を「回復」した残留二世の動機と背景
第7節 「残留同胞」のリドレスに尽力した戦争孤児の思い
第8節 長い沈黙を破り始めたパラワンの日系人家族
第9節 「フィリピン最後の秘境」で残留二世を訪ね歩く
第10節 社会上昇を遂げた三世の課題は日本との関わり
第3章 日本政府の責任を問い続けた「市民社会」
第1節 メディアや市民団体が提起してきた残留二世の問題
第2節 「日系人」が「残留日本人」になった背景
第3節 二世の日本国籍は「回復」なのか、「取得」なのか?
第4節 一九九〇年代以降の日系人会、支援団の動き
第5節 国会での議論と政府の立場の変化
第6節 イネス・山之内・マリャリ・フィリピン日系人会連合会会長に聴く
第7節 「日人」としての証明が難しい二世の課題
第8節 問われる日本政府の「純血主義」
第4章 「日本化」が進んだ残留二世とその末裔たち
第1節 『ハポン』で取り上げた二世と子供たちを訪ね歩く
第2節 日本で祖先の思いを遂げようとする末裔たち
第3節 日系人集住地域で暮らす末裔たち
第4節 フィリピン日系人エッセイコンテストを通して考える日系若年世代の体験と意識
あとがき



