出版社内容情報
20年前の2005年5月に、『未来をひらく歴史――東アジア3国の近現代史』を出版しました。出版の背景には──
1.1990年代前半は、「慰安婦」問題に象徴される、大日本帝国の植民地支配・侵略戦争の事実と向き合い、戦後補償問題の解決に向けた機運が高まり、97年度のすべての中学校歴史教科書に「慰安婦」問題の記述が載りました。
2.1990年代後半は、上記の機運に対して危機感を持った右派勢力が、政界・財界・マスコミを総動員して歴史修正主義運動(右派が使用する言葉で言うと「歴史戦」)が激しくなりました。
3.近隣諸国との間では、小泉純一郎首相の靖国参拝をめぐり、激しい葛藤が起きていた時期でした。
このような状況にたいして、日本・中国・韓国の歴史研究者・教師・市民が編集会議を繰り返し、作り上げたのが『未来をひらく歴史―東アジア3国の近現代史』です。
今回の新版の編集方針は──
①3部構成(第1部 東アジアの変動と近代化/第2部 二つの世界大戦と東アジア/第3部 現代世界と東アジア)とする
②通史ではなくテーマ史とする
③戦争の記述ばかりにならないようにする
④本文と資料で構成する
としました。
全編にわたって多くの図版・写真や文献資料を用いています。豊富な図版で読みやすさを追求しつつも、学問的な水準を維持した文章で叙述。
いま、世界は19世紀の帝国主義の様相を呈しています。
一国中心主義に走り、歴史認識は自国中心の狭い認識に陥りがちです。
本書刊行の目的は、文字通り、歴史に学び、未来をひらくことにあります。
私たちが望むより良い未来は、自国の未来だけではないはずです。
新版を読んで他国に生きる人びとの考え方を知り、多様な視点を獲得することが、信頼関係を発展させていくための第一歩となることを願っています。
【目次】
まえがき
読者のみなさんへ
この本の特徴と読み方・使い方
第Ⅰ部 東アジアの変動と近代化
第1章 開港と近代化
第1節 ヨーロッパは、突然、東アジアにやってきたのか
第2節 外交交渉はどのような言語で進められたのか
column メキシコ銀
第3節 どこで「西洋」と接したのか──西洋との出会い
第4節 民衆は新しい国家の建設にどのように対処し、参加したのか
column 民間宗教と男女平等
column 万歳
第2章 戦争と東アジア秩序の再編成
第1節 日清戦争で誰が何のために戦ったのか
第2節 日露戦争は人びとの世界観をどう変えたのか
第3節 日本はどのように台湾を植民地支配したのか
第4節 日本は朝鮮をどのように支配したのか
column 日本軍が戦争に動員した馬
column 正露丸の誕生
column 1900年のパリ万国博覧会
第3章 民衆生活の変化
第1節 スーツと散髪はいつから始まったのか
第2節 新たな交通手段と電信は民衆にどのような変化をもたらしたのか
第3節 家族や両性関係はどのように変化したのか──あなたの由来
第4節 学校の登場で子どもたちは何をどう学ぶようになったのか
column 三国それぞれで異なる新年元日
column 写真の登場と民衆の生活
column 学校体育の展開
第Ⅱ部 ふたつの世界大戦と東アジア
第1章 第一次世界大戦以後の東アジア
第1節 第一次大戦の東アジアへの波及を民衆はどう受けとめたのか
第2節 東アジアの民衆はどのようにロシア革命を認識したのか
column アジアの米騒動
第3節 3・1運動と5・4運動が夢見た世の中は何だったのか
column 関東大震災、差別と嫌悪
第4節 「不戦」の取組みにもかかわらず、なぜそれは破綻したのか
column 第一次世界大戦に動員されたアジアとアフリカの民衆
第2章 東アジアの総力戦と民衆の抵抗
第1節 日本はなぜ継続して対外戦争を拡大したのか
第2節 戦時中、徴兵はどのように行われたのか
第3節 女性にどんな暴力が振るわれたのか─戦時性暴力
第4節 三国の民衆は共同で日本の侵略戦争にどのように抵抗したのか
column 反戦平和をうたう
column 日中朝が複雑に絡み合った万宝山事件
第3章 大衆文化と民衆の生活
第1節 富美子たちの家族はなぜ朝鮮に渡ったのか
column 中国の赤い星
第2節 東アジアの都市民衆はどのように暮らしていたのか
column 子どもの日
第3節 植民地と戦場で大衆はど