内容説明
なぜ、100万人を超えるロヒンギャの人びとがミャンマーから逃れたのか―。ミャンマー社会に見え隠れする差別の実態とは―。軍政時代の潜入取材からおよそ30年にわたって同国を見続けてきたフォトジャーナリストによる、世界最大級の「難民問題」の解説書。
目次
1 ロヒンギャ難民キャンプへ(報道写真の“功罪”;建設中の「国境」;遠いロヒンギャ難民キャンプ ほか)
2 ロヒンギャ問題とは何か(ロヒンギャ報道の変遷;ロヒンギャ問題とは何か;ミャンマーはどのような国・社会か ほか)
3 ロヒンギャ問題を理解するための視点(民族(少数民族・先住民族)と市民権について
ミャンマーという“くに”の成り立ちとその社会の仕組みを読み解く
アウンサンスーチー氏は“政治家”である ほか)
著者等紹介
宇田有三[ウダユウゾウ]
1963年神戸市生まれ。フリーランス・フォトジャーナリスト。90年教員を経て渡米。ボストンにて写真を学んだ後、中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。軍事政権・先住民族・世界の貧困などを重点取材。95年神戸大学大学院国際協力研究科で国際法を学ぶ。「平和・共同ジャーナリスト基金奨励賞」「黒田清JCJ新人賞」他(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koichiro Minematsu
55
ロヒンギャの難民問題程度にしか理解できていないことを思い知らされた。歴史的・文化的・社会的に複雑な問題があり、もちろん日本にも問題があり、考えさせられる。難民問題ではなく、差別問題である。解決を託すならアウンサンスーチー氏しかいない気がする。2021/06/23
えいなえいな
14
少し前からロヒンギャ問題という言葉が気になっており、一度調べてみたいと思っておりました。実家のそばに被差別部落の方が住む集落があり、子供の時からなんとなく興味を持っておりました。ロヒンギャに関してはこういうものだとはとてもひと言で表せるものではないな、ということが分かった程度です。宗教の問題や先住民族問題などが複雑に絡み合っているので日本人の感覚では分かりにくいようです。差別というのは自分も知らない間にしてしまうことがあるかもしれない物なので、あらゆる知識を持っておくに越したことはないと思っています。2022/04/10
Francis
10
この本で取り上げられているロヒンギャ問題は複雑であり、私が会員になっている国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルの日本支部でも主にミャンマー関係の会員の間でアウンサンスーチーさんとの絡みで色々議論があったそうです。ロヒンギャ問題が複雑なのは長年の軍事独裁政権でロヒンギャが差別されていたこと、そしてロヒンギャがムスリムであり、いわゆる「民族問題」としてくくることが出来ないからだと言う事が分かる。この本はミャンマーで再びクーデターが起こる直前に出版されているので今はさらに複雑になっていそうだ。2025/03/12
渡邊利道
9
フォトジャーナリストの書いた本で、写真も多く、第一部はQ &A式で綿密で時間をかけた取材にもとづいて非常に細かいミャンマーとバングラデシュ国境の難民キャンプについての多様な問題について語っていく。その上で、誰しもが本当の意味で客観的になれるわけではなく自分もバイアスから自由ではないと強調する。ロヒンギャを、民族としてではなく、ムスリムというアイデンティティで捉えた方がよいのではないか、という問題提起と、その前提として民族とは何かというのを、アイヌと沖縄を例に説明していて非常に納得できるものがあった。2021/08/08
ころちくわ
8
ミャンマーのクーデターが起こる前に読み始めた本です。 あとがきは2020年7月「ロヒンギャ問題を解決するために明確な指針を出すのは、ミャンマー国民に絶大な人気を持つアウンサンスーチー氏が国のトップに就いているいる今が、絶好(最後?)の機会でもある」しかし、2021年2月1日にクーデターが起きてスーチーさんは軍部に拘束され、4回目の軟禁生活に入った。ロヒンギャが迫害されている理由は、少数民族でムスリムで言語も違うからだけでなく、複雑な歴史がある。国籍のない民族に国際社会として何ができるか。2021/02/09