内容説明
中学校教師として長年“荒れ”やいじめの問題に取り組んできた著者が、自身の実践や、ヘイトスピーチへのカウンター活動を通して、いじめやレイシズムを乗り越えるために何が必要か。地球市民として生きる「真の道徳教育」を提示する。
目次
第1章 レイシズムと教室―憎悪(ダークサイド)の生まれるところ(ヘイトスピーチの本質;憎悪のピラミッド ほか)
第2章 「道徳」教育のこれまでとこれから―いじめ・レイシズムに対抗するために(「武器」としての教育―マンデラの言葉;教育はレイシズムのワクチン ほか)
第3章 「共に生きる世界」を実現するための教育実践(思春期の葛藤の中にいる子どもたち;もう一人の自分―万引きをした子ども ほか)
第4章 教育の希望―暗闇(ダークサイド)から希望のベクトルへ(あすなろ学級のこと;人は共感性を持ち生きる ほか)
著者等紹介
渡辺雅之[ワタナベマサユキ]
1957年福島県生まれ。埼玉県公立中学校の社会科教師として22年間勤務。現在、立教大学兼任講師(教職課程)。専門は特別活動論、生徒指導論、道徳教育論。TBSドラマ『3年B組金八先生』で「いじめ問題」に取り組んだ実践が脚本化される。全国生活指導研究協議会埼玉支部常任委員、日本教育学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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オサム兄ぃ
4
6月の教文館のシンポジウムで「ヘイト銀座」という言葉を知った。外堀通りを数寄屋橋に抜けるコースでレイシストのデモが頻繁に行われ、花の銀座に来た世界のお客さまにとんだ「おもてなし」をしているのだという。集会で著者は「差別扇動行為と何か」と題した講演で、人の心にどのように差別が生まれ、社会の無知・無関心をエサに5段階の「ヘイト暴力のピラミッド」を駆け上がり、ついにはナチスのホロコーストのような惨劇に至るのかを情熱的かつ分かりやすく語ってくれた。相模原事件の衝撃から本書を読んだのだが、頭の整理にとても役立った。2016/09/09
Miki Shimizu
2
レイシズムについて、日本の道徳教育の教材ともうひとつの物語を読み解くリテラシー、共に生きる世界わ実現するための実践と、なかなか具体的で読みごたえあり。ただなー、実際に子どもを前にやっていくには、自分の人間性やら頭の回転やらいろんなものが問われるねんなー。頑張るぞ!2014/08/25
Takamitsu Tsubo
1
薦められて購入、読み終えました。 ヘイトスピーチなどが起こる、背景を分析し、今の教育と道徳教育の抱える問題について指摘。 その後、それを乗り越えるには、という構成。 主に教育者の視点で書かれており、「ふーんそうなんだ」という感想を持つ部分が多かった。 著者が述べるように、レイシズムを上回る、社会的共感を作るには、今何が必要だろうか?僕にはまだわからない。2014/09/04
@matsu
1
道徳心というと拒否感があるのは、実際に受けてきた教育や現に政権が推し進めようとする道徳の教科が、上から押し付けるもので、本書でいう真の道徳心と真逆のものだったからだろう。いじめとレイシズムの根源に不寛容と自己責任論があり、それをどう乗り越えていくのか。教育の現場で奮闘している関係者に頭が下がる思いだ。メディアや権力のことを鵜呑みにしないという感覚は広がっていると思うが、中立などの思考停止や不信からくるものとすり替わっているように思う。本当のストーリーを読ませないようにする力と戦うには、居場所が必要。2014/07/28
NN100
0
「道徳」の教科化には違和感があったけど、あってはいけないものと理解した。背景やレイシズムについて、情報を得られてよかった。もう一つの物語を考えること、行動を起こすこと、とても難しいことだけど、せめて忘れずにいたい。2019/05/29