内容説明
女学校3年生。勤労動員先で被爆し、奇跡的に生きのびた少女は、猛火の下で一夜を過ごした翌朝、死の街を縦断してひとりわが家へ向かった…。詩人の感性をもつ少女の目を通して、被爆の実相と、廃墟に生きた人々の姿を描いたノンフィクション。
目次
太陽が落ちた日
父の場合
母と弟
戸坂小学校
終戦
夕焼けと鴉
伯父の死
祖母
天と地といのちだけの日々
子供たちの周辺
緑
被爆症状
ABCC
骨仏
友柳さんのこと
飯田さんのこと
私のその後
著者等紹介
橋爪文[ハシズメブン]
1931年1月、広島市に生まれる。14歳で被爆。日本ペンクラブ、日本詩人クラブ、戦争に反対する詩人の会、新歌曲21などに所属
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kikuyo
21
著者の被爆から50年後の体験記。原爆投下は破壊力や放射能の影響調査、戦後の軍事的優位を確立するためであり、これは大戦の早期終結と多くの生命が救われたという大義名分にすりかえられてしまう。 ABCCでは、実験対象物として扱われ人間性をふみにじられた著者の屈辱感と怒り。「原爆投下は、戦後をにらんでのアメリカの覇権への野望によるものであり、核の人体実験だったと私は思っている」 4歳のミヨちゃんを「なむあみだぶつ」と唱えながらまたいで逃げたこと、日赤病院の原爆投下直後の凄惨な様子などあまりにも恐ろしい。2019/10/12
さいちゃん
13
図書本。この本を知るきっかけは、NHKの番組だったと思います。作者は原爆で大怪我をし、運ばれた病院の様子を「そのときの様子を表現する力は私にはない。」と書いてある後に、「垂れ下がった皮膚や腸を引きずって歩く人、飛び出した眼球を押し込んでる人」と書いてある。それを読んだだけで、恐ろしさ、悲惨さが伝わってきますが、実際に経験した人ではないとわからない、地獄を見たのだと感じました。半世紀経って、ようやく当時のことを書けるようになったとあります。心に強烈に残る一冊です。2018/09/26