内容説明
本書において著者は、研究者としての手堅い調査研究と、作家としての洞察力をもって、沖縄戦の核心に迫り、その全体像を描きだす。日米両軍の戦略において、沖縄作戦は何だったのか?地獄の戦場に投げだされた子どもらは何を見、何を体験したか?沖縄戦開始まもない戦艦「大和」の出撃は何を意味したのか?学徒隊の10倍余の死者を出した防衛隊が、なぜ書かれないのか?沖縄戦研究の現到達段階を示す注目の労作。
目次
1 子どもたちは何を見たか
2 沖縄戦とは何だったのか(沖縄戦・5つの特徴;沖縄戦の経過;戦場の諸相)
3 沖縄戦から何を学ぶか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
30
本当に再読して良かったと思える一冊だった。戦後における日本の右傾化は結構はやい段階で起こっていた。その原因は、戦傷病者特別援護法によって救済されるためには、国の為に戦ったという論調が必要であり、それが国家の論理、軍隊の論理の強要、史跡の靖国化をもたらしたと著者は解析する。なんとも悲しい事実である。国民であるなら、あの戦争でなんらかの被害を受けたなら等しく保障されるべきところを、「戦闘要員」であったことを条件とするなど、私からすれば考えられなくて、唖然としてしまった。具体的には、自分の意志で軍に協力したとは2022/08/13
Machida Hiroshi
4
本書は、民衆の目でとらえる「戦争」ということで、軍人軍属の回想録では出てこない、沖縄の民間人から見た沖縄戦を詳細な調査資料の研究を元に浮き彫りにした論文です。 「県民の四人に一人(!)が死んだ沖縄戦」と帯に書かれた通り、あまりに多くの人が死んだ悲惨な戦場での体験は、とても語ることが出来ないトラウマを生き残った人たちに与えたため、戦後長い時間が過ぎてから、やっとポツポツと語られるようになったと思っていました。2020/02/03
アイロニカ
2
戦争と沖縄との話題はとかくイデオロギーや差別感情にまみれてしまうため、ありのままに起こったことを知りたかった。戦災孤児となって生き延びた人々の体験記録はあまりに惨い。ひめゆり学徒隊や戦没者慰霊碑に関して「軍隊の論理」による「戦跡の靖国化」という捉え方にはまったく無自覚だったため衝撃を受けた。“あの戦争は何だったのか?”という認識の違い一つで、資料は賛美にも否定にも繋がりうるということを忘れてはならない。2018/08/05