出版社内容情報
日常でなにげなく使うオノマトペ(擬音語・擬態語など)が、いかに豊かな構造的特徴を持っているかについて明らかにする。さらに、方言におけるオノマトペの重要性を指摘し、個々の方言について体系として研究される必要性を説く。
日本語のオノマトペの特徴は、情報を効率よく伝えるために有効だというだけではない。一般に、オノマトペは、言語的な核の外側に存在すると思われているが、日本語のオノマトペの場合、日本語の構造と切っても切れない関係にある。1986年に本書の著者が英語の博士論文(Hamano 1986)で日本語のオノマトペの音韻的な特徴を体系的に扱って以来、様々な研究者が日本語のオノマトペの音韻的、統語的な特徴などを明らかにしてきている。それは、おどろくべき整合性に満ちている。本書の目的は、そのようなオノマトペの構造的な美しさと歴史的なバイタリティを一般に理解してもらうことである。(まえがきより)
第1章 オノマトペの構造的特徴の概観
1.1 オノマトペの認定における無声両唇破裂音/p/と方言の役割
1.2 オノマトペの2種類の語根
1.3 副詞用法に現れるオノマトペの形態
第2章 オノマトペの基本的な音象徴
2.1 子音の基本的な音象徴
2.2 母音の基本的な音象徴
2.3 その他の音象徴
2.4 オノマトペはどこまで擬音語か
第3章 オノマトペの意味の拡張
3.1 メタファーによるCVCVタイプの意味の拡張
3.2 メトニミーによるCVCVタイプの意味の拡張
3.3 異形のタイプ別に見られる意味の拡張の傾向
3.4 CVタイプの意味の拡張
第4章 オノマトペと一般語彙
4.1 一般副詞化したオノマトペ
4.2 一般語彙に見られる音象徴
4.3 オノマトペ起源と見られる動詞
4.4 オノマトペから派生する「する動詞」
4.5 オノマトペから派生する「めく動詞」と「つく動詞」
4.6 オノマトペの形容詞的用法
第5章 オノマトペの音韻制約と音象徴
5.1 有標の構造と無標の構造の競合
5.2 韻律的な鋳型の存在
5.3 その他の音韻制約
5.4 オノマトペの音象徴と音韻制約の関係
第6章 オノマトペと日本語の音韻変化
6.1 オノマトペに見られる弁別的な口蓋化
6.2 両唇破裂音/p, b/の問題
【著者紹介】
浜野祥子(はまの・しょうこ)
東京大学教養学部卒業,フロリダ大学大学院博士課程終了。カリフォルニア大学サンタクルス校講師,ハーバード大学客員講師,ジョージ・ワシントン大学助教授,準教授を経て現在同大学教授。著書に,The Sound-Symbolic System of Japanese(1998,CSLI/くろしお出版), Making Sense of Japanese Grammar(共著,2002, University of Hawai‘i Press), Intermediate Japanese: Grammar and Workbook(共著,2012, Routledge)など。