出版社内容情報
「言いさし」ではない。完結した内容を持つ「言い終わり」であると提言する著者による、「言いさし文」を分析した意欲的著書。複文の研究や話し言葉の文法の研究課題を共有する「言いさし文」の研究から文法研究の新しい地平を開く。
「従属節による『言いさし文』」というのは、たとえば、次の文のように、接続助詞で終結した文のことである。「おやつ、アイスクリームが冷蔵庫に入ってるからな」「あの…三鷹さん私…アパートに電話したいんですけど。」
「から」や「けど」は接続助詞であるので後に語句が続くはずなのにそこで文が終結しているし、従属節は主節に従属しているはずなのに肝心の主節が欠落している。このような文をどう文法的に説明したらよいかというのが本書のテーマである。(はじめにより)
序章 「言いさし文」の概観
1. 本書の目的
2. 本書の立場
3. 言いさし文の類型
4. 本書の構成
第1部 言い尽くしの「言いさし文」
第1章 ケド節による言い尽くし
1. はじめに
2. 「言い尽くし」のケド節の類型
3. 倒置的な用法
4. 挿入的な用法
5. 終助詞的な用法
6. ケド節による「言いさし文」の機能
7. まとめ
第2章 カラ節による言い尽くし
1. はじめに
2. 理由を表さない「から」の様々
3. カラ文のバリエーションと談話的機能
4. 理由を表さないように見える「から」
5. まとめ
第3章 タラ節・レバ節による言い尽くし
1. はじめに
2. タラ節による「言いさし文」の用法
3. レバ節による「言いさし文」の用法
4. タラ節とレバ節の使い分け
5. まとめ
第2部 関係づけの「言いさし文」
第4章 カラ節による関係づけ
1. はじめに
2. 「からだ」の使用条件-久野説の検討-
3. 「からだ」を積極的に使うのはどんな場合か?
4. 「から」による理由の説明
5. 同根の問題
6. まとめ
第5章 シ節による関係づけ
1. はじめに
2. 〈併存用法〉と〈列挙用法〉
3. シ節による「言いさし文」の位置づけ
4. 談話におけるシ節の機能
5. まとめ
第6章 テ形節による「言いさし文」
1. はじめに
2. 「て」の終助詞的な用法
3. テ形節による「言いさし文」の文脈依存性
4. まとめ
第3部 文としての「言いさし文」
第7章 「言いさし文」の文法的位置づけ
1. はじめに
2. 「言いさし文」と独立文の平行性
3. 「言いさし文」と「完全文」の従属節の異質性
4. まとめ
第8章 日本語教育における「言いさし文」
1. はじめに
2. 文型としての「言いさし文」
3. 補足説明の必要のある「言いさし文」
4. 誤解を招く恐れのある「言いさし文」
5. まとめ
【著者紹介】
東京都出身。筑波大学助手、広島大学講師、助教授を経て、現在、広島大学教授。