出版社内容情報
日本語は特殊な言語ではない。世界の諸言語と日本語を比較し、幅広い視野から日本語を見直し、同時に文法の考え方を学習する。1991年の初版から18年、増刷を重ねた言語学の定番書が待望の改訂。
本書の内容は「言語類型論の観点から見た日本語」と言える。本書の主な目標は以下の二つである。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サアベドラ
19
世間に流布する「日本語は特殊な言語だ」という言説(日本語特殊論)に対する反論の書。著者はオーストラリア先住民の言語の専門家。アボリジニ諸語の文法理論を日本語に(けっこう強引に)当てはめてみたりして、日本語は世界的に見ればいかに普通の言語なのかを力説しておられる。『世界の言語~』という割に、英語と日本語と著者の専門のアボリジニ諸語以外あまり出てこなくて少し残念。著者は最後に「日本語が特殊なのではなく、英語こそが特殊なのだ」と主張しているが、正直、英語特殊論は日本語~と同程度に無価値な気がする。2018/04/06
モリータ
11
◆専門関係の本だが一般書寄りの読み方をしたので。著者は豪先住民の諸言語の記述を本職とする言語学者。名大・筑波・東大・国研を歴任した現役の研究者。本書は2009年、改訂前1991年刊。そこここで立場を異にする高橋太郎との交流がみられるのが面白い。◆昨今の方言文法研究、古代語から琉球語も視野に入れた文法史研究など、日本語・国語学の理論的基盤や重要度が高く関心の集まる現象の確認と、その一方で、「文法論」に統語論・形態論に「意味論」としてアスペクトやヴォイスの現象を位置づける立場の源泉なのか、という疑問の確認。2019/05/31
isao_key
11
日本語が多くの点で極めて普通の言語であり、英語はある面では非常に珍しい言語であるという理由を1.母音2.語順から説明する。世界の言語の中では、日本語のように母音の数が5つである言語が最も多い。また主語、目的語、動詞の語順は、SOVが普通であるものが最も多い。三上章の主語廃止論について、a.主語に優位性はないb.主語は他の語句と同等である、の主張に対しては、a.主語と目的語は同じくらいの優位性があるb.他の語句に対して、主語と目的語の優位性はある、しかし英語の主語ほどは強くない、として三上の説を退けている。2015/05/28
宙庭隼人
5
八章を目的に(「日本語で書いてある中では一番分かりやすい」とのこと)。資料が沢山入っていて、理論をしっかり頭に入れてから見ると理解の助けになる。ワロコ⚪︎語やベトナム語等、あんまり見ない言語の例は、ちょっと分かりにくい。語順/格/シルバースティーンの名詞句階層/他動性/二項述語階層/所有傾斜/主語、主格、主題、動作者:文法分析の四つのレベル/日本語は特殊な言語ではない。しかし、英語は特殊な言語だ。/言語教育への提案2016/03/27
おとや
4
基本的な内容は改定前と同じ(当たり前か)。ただし、初版が出版されたあとの研究の進展に合わせて書き換えられている部分も多く、当然こちらを読むべき。第8章までは個別の文法現象について丁寧に検討しており、とくに4章、および6章から8章は非常に得るものが多かった。言語学が専門ではなく、「日本語が特殊な言語か」ということに興味のある人は、第9章、第10章だけでもさらっと目を通すと、得られるものがあると思う。逆に、言語学に興味のある人にとって、面白いのは第8章まででしょう。2015/08/25