内容説明
旧炭住を「筑豊文庫」として移り住み、筑豊に日本変革の夢をかけた記録作家上野英信と妻・晴子の30年の日々。
目次
いまにして
『追われゆく坑夫たち』の頃
鳥を恋う
よりによって
三回忌
広島にて
母ありて
ひえびえとして
八月
筑豊を写した人〔ほか〕
著者等紹介
上野晴子[ウエノハルコ]
1926年、福岡県久留米市に生まれる。1956年、上野英信と結婚。同年、息子・朱を出産。1964年、福岡県鞍手郡新延に移り、夫とともに筑豊文庫を開設。1997年8月死去、享年70(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
21
筑豊を描いたノンフィクション作家・上野英信の死後に、未亡人が書いた思い出本。弱者の味方のはずだった英信は、家庭内では男尊女卑の暴君で、家族は辛い日々であったという神話崩し。晴子夫人の文章も、味がある。2018/12/20
ジン
2
上野英信は筑豊に移り住むにあたり、廃屋となっていた炭坑住宅を改築し、地域の公民館・炭坑資料館・志ある人々の集う場所となるべく「筑豊文庫」と名付けた家に住んだ。この英信の奥様だった晴子さんのエッセイを読むと、地域のためというのと全国の有志のためというのが両立せず、来客が絶えないが地元からは浮いてしまった、その意味では失敗したと書かれていて、忌憚のない評価であり、切ない話でもある。夫に文学を禁じられ30年間を家事に徹した妻の、振り続けたコーラが吹き出したような言葉。処女作にして遺作なので、先鋭にして滋味あり。2015/11/27