内容説明
仕事してる人、風呂に入っとる人、路地で赤ちゃんあやしてる人、それから遺体になって柩に入ってる人も、全部自分の姿ですよ。ヤマで生まれ、ヤマで育ち、ヤマで働き、ヤマを撮り続けた、ヤマの写真家イサオちゃんのヤマ。
目次
ヤマで暮らし、ヤマを撮る(本橋成一)
イサオちゃんの話(姜信子)
ヤマに生まれて
炭住暮らし
石炭掘る仕事
事故を撮る
響けうたごえ
ヤマの子ども
アリラン峠
ヤマの終わり
カメラ
著者等紹介
山口勲[ヤマグチイサオ]
1937年、福岡県中間市生まれ。水巻高校卒業後の1957年から、日炭高松炭砿で採炭夫や捲方、仕繰夫として働く。1965年、従軍カメラマンとしてヴェトナムへ渡り、戦火の中の民衆を取材。帰国後は日雇い労働者、会社員、運転手などの職をこなし、98年にヴェトナム再訪。2004年、初の写真展が開かれる。中間市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワカコ
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「日記みたいなもんですな」。ヤマを撮り続ける理由を“イサオちゃん”はこう語る。そこには報道カメラマンの目線は微塵も無い。自らもヤマで生まれ育ち、働き、生きた著者のカメラの前に、人々は生活をさらけ出す。そして、事故や組合闘争の写真を見ると、炭鉱で生きた多くの人達の犠牲や闘いの上に今の日本があることに今更ながら気づかされる。炭鉱労働を深く知ることができる写真集は他にもあるだろうが、山口勲という1人のヤマの男の目線を通じて、炭鉱町の生活の一端が感じられる写真集。各人が寄せたエッセイも著者の人柄が伝わって良かった2012/01/31
mitam
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炭鉱の写真と言えば、土門拳「筑豊のこどもたち」。相場はそう決まっている(らしい)。貧困にあえぐ炭鉱労働者の窮状を、100円写真集で世に訴えた。 そういう意味で、山口さんは土門の対極にいる人。帯にある通り、炭鉱労働者の子として生まれ、炭鉱で働いた。そして、誰か見せるわけでもなく、「日記のように」撮っていたという。 写真家は撮ったものを人に見せてなんぼなのに、山口さんはどうして、こんなに生き生きと人の生死を写した作品を、長いこと出版しなかったんだろう。ベトナム戦争に従軍するほど、写真家に憧れていたのに。2018/02/12