内容説明
思想の「普遍性」や文学的な「内面・自己」という観念が顧みられなくなった時代に、人々は世界の「壊れ」をどういう形で生きているか―。真摯な読みをとおして現代社会のリアリティ喪失状況を問う、著者初の書評集成。
目次
1 世界の「壊れ」を見る(「マス・イメージ」は変えられたか―吉本隆明『マス・イメージ論』;本然的なるものの“喪失”―江藤淳『自由と禁忌』 ほか)
2 死の既視感(文体を支える力―増田みず子『シングル・セル』/桐山襲『スターバト・マーテル』;「文学」という鏡―金井美恵子『あかるい部屋のなかで』/津島佑子『夜の光に追われて』 ほか)
3 リリシズムの条件(郷愁の終わりの場所―金鶴泳『郷愁は終り、そしてわれらは―』;ねじ曲げられた歴史の“恨み”―金石範『火山島』 ほか)