内容説明
人間中心主義の具体的な顕れとして、アンドレ・ジッドの“営為=作品”には、その欠陥に至るまで今も疑いえない生命が息づいている。ジッド研究の第一人者による最上の手引書。
目次
第1章 息子
第2章 マドレーヌ
第3章 アフリカ
第4章 天国と地獄
第5章 テセウス
終章 キュヴェルヴィルから…
ジッド研究の現状(一九九三年十一月、日本における講演)
著者等紹介
マルタン,クロード[マルタン,クロード][Martin,Claude]
1933年生まれ、文学博士。リヨン第2大学教授、副学長をへて現在、同大学名誉教授。ジッド友の会会長、類い稀なる学識を誇り、早くからジッド研究の第一人者として活躍する。ジッド書簡の公刊にも力をそそぎ、母ジュリエット、ジュール・ロマン、フランソワ=ポール・アリベール、アンドレ・リュイテスらとの往復書簡集を編纂校訂
吉井亮雄[ヨシイアキオ]
1953年生まれ。東京大学文学部卒業、京都大学大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。パリ=ソルボンヌ大学文学博士。フランス近現代文学専攻。現在、九州大学大学院人文科学研究院教授。著書、ジッド『放蕩息子の帰宅』仏文校訂版(九州大学出版会、1992。第1回日本フランス語フランス文学会奨励賞受賞)
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感想・レビュー
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ジッドの紆余曲折な遍歴を辿る。家庭での敬虔なクリスチャンの母の教育に悩み、自堕落でディレッタント奔放な生活に進み(石川淳が共鳴する?)、この頃ヴァレリーと書簡の遣り取りやワイルドと親交を得たりする。後にワイルドの獄中での謙虚さへの屈服に強く反撥を抱いたり、晩年には共産主義へ傾倒していく。ジッドはカミュに影響を与え実存主義の魁ともいえるかも。著者はロブグリエ的反ロマンでなくプルースト的文脈にジッドを据える。あくまで正統派近代文学と言いたいのだろう。また著者の68年体験(溝口などの日本映画に没頭)が興味深い。2017/07/09