内容説明
本書は、著者がこれからの考古学の理論的・実践的研究の発展に大きく貢献できると考える認知考古学のあり方について模索したものである。現在の認知考古学は複雑な様相を呈しており、認知考古学を称する研究の中にもさまざまなバリエーションがある一方、認知という言葉自体は多用しなくてもその基本的枠組みにおいて認知的といえる研究もある。こうした複雑な状況を整理し、認知考古学の射程を定めていくことが、目的の一つである。主として理論的問題を扱った第1部と、事例研究を中心とした第2部から構成されている。
目次
第1部 認知考古学の理論と方法(考古学において心はどのように扱われてきたか;認知諸科学における近年の発展;認知考古学の理論と方法)
第2部 縄文から弥生へ―ケーススタディ(現在までの研究の問題点;属性による空間的変異の位相差とコミュニケーション―後期後葉~晩期前半;「縄文」と「弥生」のカテゴリーに関わる人工物の動態―後期後葉~晩期後半;住居跡と埋葬遺構の分析―後期後葉~弥生時代開始期;土器製作スキーマと文化動態)
感想・レビュー
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遊動する旧石器人
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2000年2月29日初版(2002年3月10日2刷)。第1部で認知考古学の理論的な問題を論じ、第2部で実践的研究として縄文から弥生への変化について分析をする。初めて読んだ時は学部生の時で、第1部がほとんど理解できず途中で挫折したことを覚えている。その後読了していたが、この度改めて再読。「縄文vs弥生」という二項対立で捉えられがちな縄文から弥生への変化プロセスを、遺物にみられる人々の認知過程から導き出す1冊。考古資料には当時の人々の認知システムが反映されており、それらを研究することは非常に面白いものである。2018/03/09